日仏フォーラム「環境移行期を生きる」に寄せて
ローランス・テュビアナ
Laurence Tubiana
国連気候変動パリ会議(COP21)特別代表
2015年12月にパリで開かれる第21回国連気候変動パリ会議において、心的議題となるいくつかの点について話し合う重要なフォーラムが、東京で開催されることを嬉しく思っております。
COP21は、地球温暖化問題についての国際的合意を目指す歴史的な機会となります。目標とされる合意には、二つの特徴があります。
今後十数年に渡り気候変動に対応策が取れるよう、十分な柔軟性を備えつつ、採択後は、低炭素でレジリアントな経済に向けた移行を促進するための、具体性を兼ね備えたものでなければなりません。
国際合意を支えるには、「各国の貢献」が求められます。共通の目標に向けた各国の努力です。
EU、アメリカ、中国はここ数週間にその道筋を発表しました。日本も今後この動きに協調されることを私達は願っております。
国際合意、各国の貢献、財政、それを支えるイニシアティヴという四本柱が揃ってこそ、低炭素社会への歩みを進めることができるのだと思います。
財政面での取り組みは、最貧国が低炭素でレジリアントな経済に向けた移行を推進する助けとなる、連帯と衡平の証です。
気候変動とその影響との闘いの場において、「解決アジェンダ」は、全ての関係者―都市、地方、企業、市民社会―を一つに集め、各国政府を支えるような、具体的な行動を起こすことを可能とするものです。フランスは、2015年国連気候変動パリ会議が、これまでの取組を超える「解決の会議」となることを願っております。
COP21の成功は皆様の一人ひとりにかかっています:政府が決定する政策に拠るのは当然のことですが、私達の生産の仕方、消費の方法と深く関わる問題であるだけに、企業、市長、研究者、市民が形成する市民社会の全ての方が成功の鍵を握っているのです。
私は、今回のフォーラムの開催に際し、在日フランス大使館への協力を惜しまれなかった日本の各機関に感謝申し上げます。特に環境省様とIGES様、三井不動産様、朝日新聞社様と日本経済新聞社様、そして閉会の辞を賜る都知事の舛添要一氏にお礼を申し上げます。
私達は、日本の関係者の皆様と「解決アジェンダ」の策定に向けた協力体制を築くべく務めて参りました。私達はCOP21が歴史的な合意に達することを願っておりますが、日本の皆様もまたその成功に大変意欲的であられることを感じております。
この有益な討論会が、環境移行期において懸念される問題を広く議論し、さらには市民として、当事者として皆様が今後もこの問題に取り組まれる良い機会となることを、願ってやみません。
ご来場の皆様にとり実りある討論会となりますように。
日仏フォーラム「環境移行期を生きる」開催にあたって
望月義夫
MOCHIZUKI Yoshio
環境大臣
気候変動は人類共通の世界的脅威であり、国際社会が一丸となって取り組むべき問題です。今年は、12月にパリで国連気候サミットCOP21が開催され、新たな枠組み合意を目指す極めて重要な年です。
このCOP21において、正しい選択を行えるよう、それぞれの国において、アイディアを共有し合い、直ちに行動につなげていく必要があります。議長国であるフランスのリーダーシップに期待するとともに、我が国としても全ての国が参加する公平かつ実行的な枠組みへの合意に向け引き続き積極的な議論に貢献していきます。
本日のフォーラムは、環境省と在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ日本との共催のもと、日仏の政府、企業、研究者、文化人など幅広い分野のパネラーにより、新たな環境への移行期間を迎える両国の展望について知見を交換する貴重な機会となるともに、環境分野における日仏協力の促進、日仏企業の関係強化の機会となることが期待されます。
最後に、本フォーラムの開催にご尽力いただきました関係各位に、この場をお借りして厚く御礼申し上げます。
10時 開会の辞
フィリップ・ゼレ
Philippe Zeller
フランス気候変動交渉大使 アジア担当
1952年生まれ。1978年国立行政学院(ENA)卒業、フランス外交官。ハンガリー、インドネシア、カナダ全権大使。レジオン・ド・ヌール国家勲章叙勲。2000年環境大使。COP21に向けて2015年1月より現職。
北村茂男
KITAMURA Shigeo
環境副大臣
昭和20年輪島市生まれ。平成13年、藍綬褒章受賞(地方自治功労)。衆議院法務委員会委員、自由民主党副幹事長、総務大臣政務官兼内閣府大臣政務官、自由民主党副幹事長などを経て、平成26年9月より現職。
10h30 – 12h30 ラウンド・テーブル
2050年に向けた日仏の低炭素社会の実現のための経済戦略とは?
2050年に向け、地球温暖化が2度進むのを防ぐためにどのような具体策があり得るのでしょうか。日本とフランスの専門家達が両国の低炭素社会実現のための戦略について議論を交わします。エネルギー効率の問題(住宅、産業、運輸の各分野)、異なるエネルギー源の理想的な配分、CO2貯留技術、より環境に配慮した燃料(水素、生物炭素、低炭素電気…):どのような選択肢があり、どのくらいの期限で実現できるのでしょうか?公共政策によるイニシアティヴにはどのようなものがあるでしょうか(炭素税、排出取引)?
司会 浜中裕徳
HAMANAKA Hironori
公益財団法人地球環境戦略研究機関理事長(IGES)
東京大学工学部都市工学科卒。厚生省入省後、環境庁創設と共に同庁に出向。外務省出向(経済協力開発機構日本政府代表部)等を経て、同企画調整局地球環境部長、環境省地球環境局長、同地球環境審議官を歴任。環境省退職後、慶應義塾大学環境情報学部教授を務める。2007年4月よりIGES理事長に就任、現在に至る。
川上毅
KAWAKAMI Tsuyoshi
環境省地球環境局市場メカニズム室長
1989年、環境庁入庁。廃棄物・リサイクル対策部循環型社会推進室長、総合環境政策局総務課企画官、同環境経済政策調査室長等を経て2014年4月より現職。OECD(経済協力開発機構)、滋賀県、上智大学大学院に出向。循環型社会形成推進基本法の制定、環境白書の執筆・編集等に関わる。OECD環境保全成果審査ワーキングパーティー共同副議長。
国吉浩
KUNIYOSHI Hiroshi
NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)理事兼エネルギー・環境本部長
1984年通商産業省(現経済産業省)入省後、エネルギーや技術に関する様々な政策を企画・実施してきた。国連工業開発機関(UNIDO)の事務局長補佐官や東京工業大学教授など、経済産業省以外でも活躍。2012年9月より現職。NEDOのスマートコミュニティや国際関係の活動の責任者。東京大学工学部電気工学科卒業、ケンブリッジ大学修士(国際関係論)、京都大学博士(エネルギー科学)。関西学院大学客員教授。
末吉竹二郎
SUEYOSHI Takejiro
国連環境計画・金融イニシアチブ(UNEP FI)特別顧問
1967年、東京大学経済学部卒業後、三菱銀行入行。1994年、三菱銀行ニューヨーク支店長、同行取締役。1996年、東京三菱銀行信託会社(ニューヨーク)頭取。1998年、日興アセットマネジメント副社長。2003年、国連環境計画・金融イニシアチブ(UNEP FI)特別顧問(現職)。2013年5月8日、一般社団法人グリーンファイナンス推進機構設立にあたり、代表理事に就任(現職)。金融手法についての知見・経験豊富であり、環境問題についての公職でも活動中。
ミッシェル・コロンビエ
Michel COLOMBIER
持続可能な開発と国際関係研究所所長(l’IDDRI)
パリ政治学院(シアンスポ)助教授、持続可能な開発と国際関係研究所(IDDRI)の共同創立者、科学ディレクター。国連気候変動枠組条約の交渉役、気候変動ボード(ロンドン)議長。仏環境エネルギー管理庁の政策評価局長、地球環境ファシリティ科学技術アドヴァイザリーパネルメンバーなど歴任。環境エネルギー分野の政策立案に広く関わりつつ大学機関とも強く連携し研究活動も熱心に継続している。
フランソワ・モアザン
François MOISAN
持続可能な開発国土整備省(ADEME)所長
仏環境省に環境エネルギー政策を提言する研究機関である 環境エネルギー管理庁国際関係・研究・戦略局長 30年以上フランスのエネルギー効率についての政策立案に携わる。2013年よりIPEEC理事会議長。「2010年-2020年フランスエネルギー計画」検討委員会議長。
14h00 – 16h00 ラウンド・テーブル
企業、温室効果ガス排出とグリーン成長 COP21に向けた目標とは?
フランスと日本は、過去10数年無制限な成長を続けており、他の先進国と同様に環境に配慮し、次世代のニーズを満たす資源を残すことを考慮した新たな発展の道を見つける必要に迫られています。どのようにすれば経済 成長と環境の保全を両立することができるでしょうか? 温室効果ガス排出削減目標に、効果的に寄与するような企業の施策にはどのようなものがあるでしょうか。どのようなイノベーションと成功事例があるのでしょうか。公共政策にはどのようなことを期待できるでしょうか。
司会 久保田啓介
KUBOTA Keisuke
日本経済新聞 編集委員兼論説委員
1987年、日本経済新聞社入社。地球環境問題、原子力・エネルギー、科学技術政策などを長く取材。2009年から現職。
出雲充
IZUMO Mitsuru
株式会社ユーグレナ 代表取締役社長
東京大学農学部卒、2002年東京三菱銀行入行。2005年8月株式会社ユーグレナを創業、代表取締役社長就任。 同年12月に、世界でも初となる微細藻ユーグレナ(和名:ミドリムシ)の食用屋外大量培養に成功。 世界経済フォーラム(ダボス会議)Young Global Leader選出(2012年)、第一回日本ベンチャー大賞「内閣総理大臣賞」(2015年)受賞。 著書に『僕はミドリムシで世界を救うことに決めました。』(ダイヤモンド社)がある。
フランソワ・ヴネ
François Venet
エア・リキード 副社長(フランス)
グランド・ゼコールの名門の一つである国立ポンゼショセ土木大学卒業。USエア・リキード社シニアヴァイスプレジデントを経て2002年より同社本社勤務。欧州統合発展部門副社長、フランクフルト勤務などを経て、建築技術副社長。2013年、エア・リキード グローバルE&C副社長。2014年から同社エグゼクティブ・コミッティ・メンバー。
エレーヌ・ルベデフ
Hélène Lebedeff
ヴェオリア 持続可能な発展副局長(フランス)
ヴェオリアの持続可能な開発副局長。同社の社会的責任及び持続可能な開発についての方針の企画、立案、実行を担当、さらに持続可能な開発のための経済人会議における同社代表も務める。フランスの経済産業省とフランス貿易投資庁における役職も歴任。エコール・ポリテクニーク、グランド・ゼコールの一つであるフランス国立高等電気通信大学卒。
三岡美樹
MITSUOKA Miki
オリックス株式会社 環境エネルギー本部業務管理部長
1986年、オリエント・リース株式会社(現オリックス株式会社)入社。総務部人事課、社長室広報課等を経て、1998年、オリックス環境株式会社出向。2006年、同社執行役員。2009年より現職。
尾﨑信之
OZAKI Nobuyuki
工学博士、株式会社東芝 社会インフラシステム社 鉄道・自動車システム事業部 技監
東京大学工学部卒。1983年、東芝入社。鉄鋼・紙パルプ工場向けの計算機制御システム、マルチメディアシステム、デジタル放送システムデータ放送システムなどの開発及びにエンジニアリングを担当。現在、ITS(高度交通システム)、都市交通ソリューションのシステムエンジニアリングに従事。IEEE(The Institute of Electrical and Electronics Engineers, Inc)のITSS(Intelligent Transportation Systems Society)のBOG(Board Of Governor)メンバー。
16h15 – 18h15 ラウンド・テーブル:
明日のよりよい暮らし 新たな環境への移行期間における都市の生活様式とその後の展望とは?
フランスと日本は、過去10数年無制限な成長を続けており、他の先進国と同様に環境に配慮し、次世代のニーズを満たす資源を残すことを考慮した新たな発展の道を見つける必要に迫られています。どのようにすれば経済 成長と環境の保全を両立することができるでしょうか? 温室効果ガス排出削減目標に、効果的に寄与するような企業の施策にはどのようなものがあるでしょうか。どのようなイノベーションと成功事例があるのでしょうか。公共政策にはどのようなことを期待できるでしょうか。
司会 大野博人
ONO Hirohito
朝日新聞 論説主幹
1955年生まれ。81年、朝日新聞社入社。ジャカルタ支局長、パリ支局長などを経て、07年にヨーロッパ総局長としてロンドンに赴任。12年から論説主幹。
マニュエル・タルディッツ
Manuel TARDITS
建築家、みかんぐみ共同主宰
1959年パリ生まれ。建築家、1995年より建築設計事務所みかんぐみ共同主宰。ユニテ・ペタゴジックNo.1、東京大学大学院修士課程修了。ICSカレッジオブアーツ副校長など歴任。2013年より明治大学大学院特任教授。芸術文学勲章シュヴァリエ受章。主な作品は、NHK長野支局、愛・地球博トヨタグループ館、万世橋駅鉄道遺構リノベーション、仏国立極東学院など。著書に「団地再生計画」「東京断想」など。
ジャック・レヴィ
Jacques LEVY
地理学者、都市工学者、スイス連邦工科大学教授、エスパス・タン・ネット誌共同編集長
社会科学哲学、住空間理論、都市工学、近代化、地図作成法を主要な研究テーマとする。
伊東豊雄
ITO Toyo
建築家
1941年生まれ。65年東京大学工学部建築学科卒業。主な作品に「せんだいメディアテーク」、「コニャック・ジェイ病院」(パリ)、「台湾大学社会科学部棟」(台湾)など。日本建築学会賞作品賞、ヴェネチア・ビエンナーレ金獅子賞、王立英国建築家協会(RIBA)ロイヤルゴールドメダル、プリツカー建築賞など受賞。2011年には私塾「伊東建築塾」を設立。これからのまちや建築のあり方を考える場として様々な活動を行っている。
小林光
KOBAYASHI Hikaru
慶應義塾大学特任教授、元環境事務次官
1949年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒、東大まちづくり大学院修了、パリ12大学都市研究所満期退学。博士(工学)。73年環境庁入庁。環境管理局長、地球環境局長、大臣官房長、総合環境政策局長、事務次官などを歴任。地方では、北九州市産業廃棄物課長を務める。2011年4月より現職。編著書に「日本の公害経験」、「エコハウス私論」、「低炭素都市」、「環境でこそ儲ける」、「ザ・環境学」などがある。
枝廣淳子
EDAHIRO Junko
東京都市大学環境学部教授、幸せ経済社会研究所所長、環境ジャーナリスト、翻訳家、NGOジャパン・フォー・サステナビリティ代表
東京大学大学院教育心理学専攻修士課程修了。環境問題に関する講演、執筆、異業種勉強会を主宰。対話と共創による合意形成の場づくりを地域や企業で担う。幸福度や新しい経済のあり方、レジリエンスについて研究を行 い、幸せな未来の共創をめざしている。『不都合な真実』『世界はシステムで動く』『レジリエンスとは何か』など著訳書多数。
18h15 閉会の辞
ティエリー・ダナ
Thierry Dana
駐日フランス大使
1956年生まれ。法学修士号取得、政治学専門研究課程修 了、政治学院卒業、国立行政学院卒業。在アルジェリア・フランス大使館。フランス外務省北アフリカ・中東局、北大西洋条約機構( NATO)の変革、ドイツ再統一、ワルシャワ条約機構の解体などの重要案件を担当。1993年から1995年まで首相付外交顧問補佐、1995年に先進国首脳会議(リヨン・サミット)事務局長を歴任。駐香港フランス総領事、フランス大統領府官房でアジア・戦略問題を担当。2002年フランス外務省アジア・オセアニア局長。2005年コンサルティング会社を設立。フランスの大企業や中小企業向けの国際展開戦略に関するサービス、外国の対仏投資家向けのサービスを提供し、これらの分野で特筆すべき業績を挙げる。2014年より現職。国家功労勲章シュヴァリエを受章。
舛添要一
MASUZOE Yoichi
東京都知事
昭和23年福岡県北九州市生まれ。東京大学法学部政治学科卒業。舛添政治経済研究所所長、国際大学GLOCOM主任研究員・教授、参議院憲法調査会幹事/外交防衛委員長/憲法調査会幹事、厚生労働大臣を経て、平成26年2月から現職。
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2015-05-18 - 2015-05-18
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入場無料(オンライン申し込み)
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アンスティチュ・フランセ日本(フランス大使館内)
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日本橋三井ホール
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