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「初期作品から最近の『死に至る愛』にいたるまで、レネにはひとつしか主題がない。つまりレネが取り上げる映画的身体や俳優は死者の世界から帰還する人間だということ」。ジル・ドゥルーズが『映像=時間』でそう述べているように、レネの作品の多くは「死」を巡ってきたと言えるだろう。そして最後の3作品『風にそよぐ草』、『あなたはまだ何も見ていない』、『愛して、飲んで、歌って』では、まさに訪れるであろう自らの死を語ってみせた。生へのありったけの愛とユーモアを込めて。

2014年3月1日に91歳でその生涯の幕を閉じた偉大なる映画監督アラン・レネを追悼し、晩年の2作品『風にそよぐ草』、『あなたはまだ何も見ていない』、そして代表作の中から『去年マリエンバートで』、『薔薇のスタビスキー』、『恋するシャンソン』を上映します。

 

 

 

アラン・レネ
ヌーヴェルヴァーグの勃興に先立つこと10年。アラン・レネは、1948年にデビューして以来、たった一人で陽のあたらない道を歩み続けてきた。早くから革新者であったとはいえ(『ヴァン・ゴッホ』、『夜と霧』、『ヒロシマモナムール』)、彼の作品は先行する作品と袂を分かっていたわけではありません。あらゆる理論に抵抗するレネは、映画に元来備わった力に手を加えることなく、逆にその「必然性」が、レネを話法と形式の過激な実験へと導いていく。彼は作家であるよりも演出家であることを望み、映画を一つのアトリエ芸術と見なす。彼にとって映画とは、集団で営まれ、ほかの芸術分野を取り込み、いくつものノウハウを摂取するアトリエの芸術なのだ。文学(マルグリット・デュラス、アラン・ロブ=グリエ、ホルヘ・センプルンによる脚本)があり、演劇(戯曲の映画化、またはエマニュエル・リヴァ、デルフィーヌ・セイリグ、サビーヌ・アゼマなど舞台女優の起用)があり、音楽(現代の楽曲、またはオペレッタ)があり、そして漫画(『お家に帰りたい』)もある。犯罪映画(『彫像もまた死す』、『戦争は終った』)にはじまり、意識と想像のドラマ(『去年マリエンバートで』、『プロビデンス』)や恋愛の悲劇(『死に至る愛』、『メロ』)にいたるまで、レネは次から次へとトーンを変えてきた。『スモーキング/ノースモーキング』、『恋するシャンソン』、『六つの心』といった近作では、コメディにもっとも比重を置く。そして晩年の作品となる『風にそよぐ草』、『あなたはまだ何も見ていない』でも、視覚的な実験や、脚本における見事な離れ業は健在ながら、多くの観客を楽しませ、笑わせ、感動させる驚くべき才能を大いに発揮。遺作となった『Aimer, boire et chanter 愛して、飲んで、歌って』は第64年ベルリン国際映画祭に出品され、通常若手監督が受賞するアルフレッド・バウアー賞を、「常にイノベーティブで新しい境地を開拓している」という理由で91歳にして受賞した。

 

「アラン・レネは誰よりもフランスという国を描いている映画作家だ。まさにその時代におけるフランスというものがどんな国なのかを正確に見せ、こちらを「不愉快にさせる」やり方でそれを行っている。イギリス文化など、他の国の文化に非常に造詣が深いレネが、モンテスキューの『ペルシア人の手紙』のような辛辣な見方でフランスを眺めているような印象を受ける。彼はこの国において起こり得る、想像可能なあらゆるフィクションを生み出している。シャブロルもフランスをたくさん描いているが、いつも同じタイプの物語を語っている。それに対してレネは、推理もの、SFものや、政治ものなど、様々なジャンルの作品を撮っていて、そのたびに、フランスを非常に的確に描いている」。アルノー・デプレシャン (「レ・ザンロキュプティーブル」アラン・レネ特集号)

「レネの作品はどれも、頭の中にあることについて語っている。つまり私たちのアイデンディディーを構成していることについて。私たちは、様々な分子、模範になるもの、あるいはこれまでに見たり聞いたりしてきたフィルムや歌、それに自分たちの周囲の人々について語られている物語によって構成されている。

そしてさらには、『スモーキング/ノー・スモーキング』の中でのように、私たちに起こり得るかもしれないあらゆる物語によって構成されている。レネの作品が述べていることは、私たちの頭の中には、記憶が存在している、それもとくに想像的なものが存在しているのだということだ」。
パスカル・フェラン (「レ・ザンロキュプティーブル」アラン・レネ特集号)

「レネは集団の記憶について撮り始めた。ナチの強制収容所の記憶、ゲルニカの記憶、国立図書館の記憶。しかしレネは、二人の記憶と、複数の人間の記憶との背理に気づくことになる。異なるレベルの過去はひとりの登場人物、ひとつの家族、ひとつのグループを指示しているのではなく、世界の記憶を構成する、連繋していない場所のように、まったく異なる登場人物たちに差し向けられているのだ」。ジル・ドゥルーズ「映像=時間」

 

 

 

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開場:20分前
一般:1200円 学生:800円 会員:500円 5月9日10:30の回を除く。
アンスティチュ・フランセ東京(03-5206-2500)



アラン・レネ追悼特集

2014-05-09 『慎み深い革命家、アラン・レネの方法論』、『ガーシュイン』
2014-05-09 『薔薇のスタビスキー』
2014-05-09 『去年マリエンバートで』
2014-05-09 『あなたはまだ何も見ていない』
2014-05-10 『恋するシャンソン』
2014-05-10 『風にそよぐ草』
2014-05-10 『あなたはまだ何も見ていない』※上映後、廣瀬純によるレクチャーあり。