多くの映画ファン、映画人たちが「自分たちの生きている時代で最も重要な映画作家の一人」として敬愛してやまないフィリップ・ガレル。彼は、男たち、女たち、子供たちを日記の中に書かれるような親密さとともに描きながら、そこに過去、現代、いくつもの時代が重なり合う普遍的な物語を浮かび上がらせてきました。最新作『ジェラシー』公開記念に、未公開作品も含め、彼の作品を時代、愛した人々を軸にその世界をご紹介します。

 

 

Maruice Garrelモーリス・ガレル(1923~2011)
最新作『ジェラシー』は、処女作から彼のほとんどの作品に出演する俳優である父、モーリス・ガレル(2011年没)の30歳の頃の物語である。フィリップ・ガレルは貧しい芸術家の家庭で育ち、彼の両親は『自由、夜』で語られているように、人形劇のおかげで何とか生計を立てていた。5歳の時、舞台俳優だった父、モーリス・ガレルは三人の子供を置いて、家を出る。フィリップ・ガレルは彼を介して、直接人生からインスパイアされた作品を作りはじめ、彼の存在はその後も作品に大きな影響を与え続ける。「少なくとも『記憶のためのマリー』まで、僕の作品を作っていたのはモーリスだった。彼が気に入らない部分は一貫して削除していた。たとえば、最初の短編を『幻滅の森』というタイトルにしようとした時、彼は「だめだ」と言った。そして、次に『調子の狂った子供たち』というタイトルを見つけた。「いいね、大丈夫だ」と言ってくれた。彼の影響はシナリオのコンセプトにまで及んでいて、本当に一人だったのは、撮影の時だけだった。今でも最初の撮影のラッシュを見るのは彼なんだ」『ジェラシー』は、『訪問の権利』(モーリス・ガレルを主演に、両親の離婚後、彼の新しい恋人とともに過ごす週末を描いた2作目となる作品)のリメイクとなっている。ここで語られているのは、処女作『調子の狂った子供たち』から始まり、『自由、夜』そして『救助の接吻』で語られているカップルの争いの物語の変奏であり、フィリップ・ガレルが父、モーリスの存在なしに彼を語った最初の作品でもある。

 

『自由、夜』(1983年/82分/35ミリ/モノクロ/日本語字幕付)
『救いの接吻』(1989年/83分/35ミリ/モノクロ/英語字幕付)

 

Nicoニコ (1938~1988)
60年代前半、ヌーヴェルヴァーグ次世代の旗手として注目を浴びた映画作家フィリップ・ガレル。パリの五月革命を機にパリを離れたガレルは、1969年、運命の女ニコと出会うことになる。ニコは、モデルとして活躍後、アンディ・ウォホールに見いだされ、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドにボーカルとして参加していた。運命的に出会ったふたりは公私共にパートナーとなるが、79年に離婚。1969年から70年代末までに続く愛の暮らしのなかで、ふたりは数々の作品を生み出した。そのひとつが『内なる傷痕』である。彼らは子供を作るように、1979年の別離まで共同で作品を制作した。88年にニコが事故により急逝した後も、ガレルは彼女と過ごした日々の記憶を、自身の監督作品のなかに刻み続けてきた。

 

『内なる傷痕』(1972年/57分/35ミリ/カラー/日本語字幕付)
『秘密の子供』(1979年/92分/35ミリ/モノクロ/日本語字幕付)
『ギターはもう聞こえない』(1990年/98分/35ミリ/カラー/英語字幕付)
『愛の誕生』(1993年/94分/35ミリ/モノクロ/日本語字幕付)

 

 

Jean Seberg ジーン・セバーグ(1938年~ 1979年)
「僕はアーティストだった。まだ30歳にもなっていなかった。ちらかった部屋で、ほとんどの時間を孤独に過ごしていた。作った映画はうまくいかなかった。何もない中で映画を作るためにシナリオを書き続けていた。そんな時、ジ-ンに会った。映画女優だが、もう映画に出ていなかった。彼女は自ら命を絶ってしまった。ジーンの顔をした女性が夢の中に現れた(部屋はがらんとしていて、扉は開いていた。その隙間から教会の壁が見えた。亡霊の顔は青白く光っていた。亡霊はこう言った「私は今、いかなければならない。あそこに、あの教会の後ろに。あなたはそこでいつでも私を見つけられるわ。」)テオフィル・ゴティエの『精霊』の中のように、自殺は若い男の前の鏡の中に現れ、彼を死へと誘う。ジーンは別の世界から僕を呼んでいた。だが、どうすればこの物語を現実の生で繰り広げられるというのか。」(フィリップ・ガレル)
フィリップ・ガレルにとって『孤高』(1974)は、ロバート・ロッセン『リリス』(1964) のリメイクでもあった。10年後、『フォンテーヌ通り』(1984)(新パリところどころの一編)に、『自由、夜』に主演したクリスティーナ・ボワソナとともに、ジャン=ピエール・レオーを迎え、ジーン・セバーグとの出会い、彼女の死を焼き付ける。そして、彼女との物語はローラ・スメットの身体を介して、再び『愛の残像』(2008)で語られることになる。

 

『孤高』(1980年/75分/35ミリ/モノクロ/日本語字幕付)
『愛の残像』(2008年/108分/デジタル/モノクロ/日本語字幕付)

 

Mai 68 68年5月
「68年、パリでは3週間5月革命が続きバークレイでもローマでも同じような学生運動が起きていたので、5月革命についての「アクチュア1」というニュース映画を作り、ゴダールに見てもらいました。その後、ネガを現像所が なくし、ポジは私の家の火事で焼けてしまいましたが、その映画を撮ったことは役に立ちました。本作の68年の武装した状態の機動隊とトラックが橋のところ にいるショット、それは私が当時に撮ったショットと全く同じです。石が積まれ、舗道の敷石をはがしたところも、「アクチュア1」と同じショットです。そし て、この映像のショットを思い出すことの方が、事件そのものを思い出すよりも私にとっては簡単でした。その残りの部分は記憶をもとに作りました。そして、 その周りにラブストーリーを書いたのです。2時間半分のラブストーリーを書き、5月革命の部分につなげました。」(フィリップ・ガレル)

 

『恋人たちの失われた革命』(2005年/182分/35ミリ/モノクロ/日本語字幕付)

 

 

主催 : アンスティチュ・ フランセ日本
協力: Bitters End, boid, シネマトリックス、スローラーナー、valeria、フィリップ・ガレル、槻舘南菜子
アンスティチュ・フラ ンセ日本 映画オフィシャルパートナー:笹川日仏財団、アニエスベー

 

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  • 2014/09/06 - 2014/10/19
  • 開場:20分前 
  • 一般:1200円 学生:800円 会員:500円
  • チケット販売時間:上映当日各回の1時間前から上映開始20分後まで。チケット販売時間内には、当日すべての回のチケットをご購入いただけます。全席自由。整理番号順での入場とさせて頂きます。上映開始20分後の入場は、他のお客さまへの迷惑となりますので、固くお断りいたします。
  • アンスティチュ・フランセ東京 エスパス・イマージュ
    〒 162-8415
    東京都 新宿区市谷船河原町 15


最新作『ジェラシー』公開記念特集
フィリップ・ガレル、重なり合うときの中で

2014-09-06 『救いの接吻』
2014-09-06 『自由、夜』 
2014-09-06 最新作『ジェラシー』先行試写会
2014-09-07 『秘密の子供』
2014-09-07 『ギターはもう聞こえない』
2014-09-07 『内なる傷痕』
2014-10-03 『恋人たちの失われた革命』
2014-10-10 『愛の誕生』※上映前、ジャン=ピエール・レオーによる舞台挨拶あり。
2014-10-12 『ギターはもう聞こえない』
2014-10-12 『恋人たちの失われた革命』
2014-10-12 『愛の残像』
2014-10-17 『救いの接吻』
2014-10-18 『愛の残像』
2014-10-18 『ギターはもう聞こえない』
2014-10-18 『孤高』※上映後、樋口泰人によるレクチャーあり。
2014-10-19 『救いの接吻』
2014-10-19 『ギターはもう聞こえない』
2014-10-19 『愛の誕生』