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静岡県舞台芸術センター(SPAC)芸術総監督の宮城聰が演出する『アンティゴネ~時を超える送り火~』が5月4日(木・祝)から5月7日(日)まで、静岡市葵区の駿府城公園内特設会場で上演されます。この作品は第71回アヴィニョン演劇祭のオープニング招待作品です。

SPAC芸術総監督・宮城聰のメッセージ

まことに光栄なことに、SPACは今年の第71回アヴィニョン演劇祭で、法王庁中庭でのオープニング上演に選ばれました。作品は僕の演出する『アンティゴネ』です。統治者クレオンに対してアンティゴネが主張する「神々の掟」は、古来より多神教世界に住むわれわれ日本人にはそもそもたいへん親しく感じられる死生観であり、いっぽうクレオンの主張する「人間の法」は、日本が近代国家を作る際に政府主導で押し立てられたイデオロギーに呼応します。(近代以前、日本では、死者をすべて「仏(ほとけ)」と呼んでいました。生前のおこないがどうであれ、死ねばみなブッダになるという考え方です。)

今日の世界を震撼させている争いの多くが、みずからを神の側、相手を悪魔の側、と規定する思想の上でおこなわれていることを考えると、「人間を神の側と悪魔の側の2つに峻別する、という思想自体を相対化する」アンティゴネの訴えを、ほかならぬ法王庁中庭で上演することには、特別な意義があると感じています。

この私たちの『アンティゴネ』を、法王庁での初演に先駆けて、5月初めに静岡で開催する「ふじのくに⇄せかい演劇祭」で、中間発表としてご披露いたします。

そしてその「ふじのくに⇄せかい演劇祭」では、鬼才ジゼル・ヴィエンヌの最新作である『腹話術師たち、口角泡を飛ばす』が上演されます。SPACが主催するこの演劇祭ではすでに2014年にジゼルの『マネキンに恋して-ショールーム・ダミーズ-』と『Jerk』という対照的な2作品を招聘し、彼女の才能の幅広さを日本の観客に知ってもらうことが出来ました。さらに今回、ドイツの人形劇団とのコラボレーションによるジゼルの新境地を紹介することで、日本の観客に彼女の驚くべき才能をいっそう強烈に認識してもらうことができると考えています。

ぜひ今年の「ふじのくに⇄せかい演劇祭」にお越しください。お待ちしております。

SPAC-静岡県舞台芸術センター
芸術総監督
宮城聰

SPAC-Satoshi Miyagi

 

 

 

 

 

 

 

 

『アンティゴネ ~時を超える送り火~』

古代の悲劇。それは「悲しい劇」ではなく、「人はなぜか必ず死ぬ」という決定的な理不尽を突きつけてくる劇だと言っていいでしょう。あくせく生きる中で、私たちはいつの間にか死と誕生への畏怖を忘れ、「死ぬ存在」としての人間のいとおしさを忘れてゆきます。しかしギリシア悲劇は、この種の鈍感がしまいにはその人を破滅させてしまうのだと喝破し、教訓としてではなく、それを「祭り」として私たちに体験させてくれるのです。

大空のもと、二千五百年を生きつづけてきた奇跡のせりふを聞き、俳優たちの織りなす音楽に身をゆだねながら命の炎のいとおしさを目の当たりにするとき、閉ざされていた私たちの身体の感覚が奥底から呼び覚まされ、悲劇こそ生命の賛歌にほかならないと実感することになるでしょう。

【日時】 54日(木・祝)18:3055日(金・祝)18:3056日(土)18:3057日(日)18:30
【会場】 駿府城公園 紅葉山庭園前広場 特設会場(全席自由)
【公式HP】 ふじのくに⇄せかい演劇祭2017

日本語上演/英語字幕