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若手デザイナーの遠藤絵美氏が、「チェーンリンク・フェルト・ホームアクセサリー」プロジェクトによって、第一回「デザイン賞」を受賞しました。遠藤氏は本プロジェクトのリサーチのため、パリのモビリエ・ナショナルの工房にて1ヵ月間のレジデンスを行う機会を得ます。

 

モビリエ・ナショナル―フランス国有動産管理局の、創造と修復のための工房は、その卓越したサヴォアフェール(匠の技)を継承し続けています。特に、公共建築物の家具や装飾を管理するアトリエ・ド・ルシェルシュ・エ・ド・クレアシオン(Atelier de Recherche et de Création)で製作される作品は、モビリエ・ナショナルの工房から生まれるすべての作品と同様に、フォルムや製作技術の両面において、最先端のイノベーションを誇るフランスデザインの象徴であることを目指しています。

このたび「デザイン賞」を受賞した遠藤氏は、アトリエ・ド・ルシェルシュ・エ・ド・クレアシオンの職人や、機織職人たちのサポートを得ることができます。さらに家具製造、椅子製造、ブロンズシャンデリア、絨毯やタペストリー修復、椅子張り、タペストリー装飾を行う100人以上の技術者や作業責任者が働くモビリエ・ナショナルの修復工房のサポートも得られます。

 

受賞者紹介:

遠藤絵美氏は、多摩美術大学生産デザイン学科テキスタイルデザイン専攻卒業後、(株)イッセイミヤケ等でデザイナーとして経験を積み、2018年ドイツ・ベルリンにて起業。テキスタイルとアート、手工業の中間領域でデザイン活動を行っており、2022年より、多摩美術大学生産デザイン学科テキスタイルデザイン専攻で非常勤講師も務めています。 

 

審査員総評

「在日フランス大使館は、モビリエ・ナショナルと共同開催する第一回目のデザイン賞を、遠藤絵美氏と、彼女のテキスタイルとデザインを組み合わせたプロジェクト、「チェーンリンク・フェルト・ホームアクセサリー」に授与できることを大変嬉しく思います。無限の形に展開可能な、シンプルなモジュールを基にした遠藤氏のプロジェクトは、モビリエ・ナショナルの様々な工房で発見できるであろう色彩と素材についてのリサーチを目的としています。今回のフランスでのレジデンスで、日本とフランスのサヴォアフェールの対話が実現することを、審査員一同、大変嬉しく思っています。」

在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ

 

「モビリエ・ナショナルはデザイン賞の一環で、アンスティチュ・フランセとの協力のもと、デザイナーの遠藤絵美氏をお迎えできることを大変嬉しく思います。モビリエ・ナショナルは、遠藤氏がテキスタイルとデザインを組み合わせたチェーンリンク・フェルトのプロジェクトを展開するための特別な環境を提供します。遠藤氏はモビリエ・ナショナルで、カラーパレットを開発する方法を見つけ、四世紀にわたる装飾美術の歴史からインスピレーションを得ることができるでしょう。モビリエ・ナショナルにとって大切な素材であるウールに関する遠藤氏の研究は、モビリエ・ナショナルの職人たちによる古くから伝わるサヴォアフェールを取り入れながら、工芸をめぐり刺激を与え合う文化交流の唯一無二の機会となるでしょう。」

モビリエ・ナショナル―フランス国有動産管理局

 

「日本のデザインは世界で多くの評価を受けています。しかし私達日本人は様々な試みが身近にありすぎてそれに気づいていないことが多いのではないでしょうか。もっと日本ならではの発想を世界的な目で再評価する機会をモビリエ・ナショナルにいただける本賞はとても意義があり、モビリエ・ナショナルからたくさんのことを学ぶだけではなく、日本とフランスが交感する素晴らしい機会になると思います。
遠藤さんの作品には、見た目のデザインだけではなく、様々な視点から文化・クラフトがどの様に社会に実装されるべきなのかを問うアイディアが詰まっているように感じました。
ぜひこのようなデザインでつなぐ日仏の試みを今後も続けていただきたいです。」

齋藤精一(パノラマティクス 主宰)

 

「世界には様々なデザインアワードがあるが、工芸の継承を幾世紀にも渡って大切にしているフランスと日本だからこそ、この二国が出会うこの度のアワードがもたらすシナジーとその効果にワクワクした。
と同時に量産品貢献から脱して新たな道を模索するデザインと、伝統という呪文から解放されて新天地を見出すべき工芸とが対話し、これからどんな関係を築き、私達の生活を豊かにしてくれるのだろうかとの想いをめぐらせた。
応募作品は多岐にわたる分野からの興味深いアプローチが見られたものの、フランスのサヴォアール・フェール(匠の技)との取り組みを有効に活用し、新たな製品の産業化まで漕ぎつけそうなプロジェクトは数点であった。最終審査の決め手はデザインと工芸そして産業の新たな三位一体の模索とその具現性にあった。」

榎本アコ(株式会社デアイ 代表)

 

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