©Pan-Européenne – Photo : Kris Dewitte

アンスティチュ・フランセ関西は、フランス映画をさらに身近に感じてもらい、様々な企画を通してフランス映画に親しんでもらうために、京都シネマと文化交流協定を締結しています。
京都シネマでは、クラブ・フランス会員証(有効期限内のもの)のご提示により、下記の映画を割引料金にてご覧頂くことができます。
www.kyotocinema.jp

おとぎ話が、何度も形を変えながら語り継がれ、いまもなおちいさな子どもたちのベッドのおともになっているのは、簡潔でときにほがらかなユーモアをたたえたそれらの物語が、あまりにも雄弁だから。ワクワクと感動のなかには、大人になってからもたくさんの発見にあふれている。10月の京都シネマでは、そんなおとぎ話のようなチャーミングで愛おしくなる作品を3作品上映。

『今さら言えない小さな秘密』
10/12(土)-11/1(金) 3週間上映
Raoul Taburin/2018/仏/90分/監督:ピエール・ゴドー/出演:ブノワ・ポールヴールド、スザンヌ・クレマン、エドゥアール・ベール
京都で暮らしていると自転車はとっても便利だ。市内育ちのあたしにとって、自転車はどこに行くにも一緒で相棒だった(最近山のほうに引っ越してしまい自転車を手放してしまったけれどここ1年ぐらいぽっかり穴があいちゃったみたい)。自転車を愛している人々は、今日も颯爽と街を走りぬけるんだろう。そんな京都とおなじぐらい、フランスも自転車が似合う国だ。毎年7月に行われる自転車レース<トゥール・ド・フランス>に国をあげて熱狂するフランス、自転車は、これまでたくさんの映画にも登場(『突然炎のごとく』や『アマンダと僕』、『少年と自転車』などなど!)してきた。この映画の舞台は、南仏プロヴァンス、ブドウ畑のひろがるどこかの小さな村。自転車にまつわるある伝説をもちながらも、ちょっとした“おおきな秘密”を抱えた自転車屋ラウル・タビュランの珍騒動をコミカルに描いていく。ラウルの修理工としての腕は有名で、この村では自転車のことを“タビュラン”と呼ぶほど。そんな彼だからこそ、“いまさら言えない”秘密を抱えていた。それは<自転車に乗れない!>ということ。この秘密は墓場までもっていくと決めていた彼に、ある日、人生最大の危機が訪れる。ひとり大暴走のはてに、秘密は隠しとおせるのか…!

フランスの国民的漫画家であるジャン=ジャック・サンペの「とんだタビュラン」を、『アメリ』や『天才スピヴェット』などでジャン=ピエール・ジュネ監督と何度もタッグを組んできたギヨーム・ローランが脚本を担当し、映画化。『アメリ』を思い起こさせるような、すこしばかり距離をとったナレーションで、秘密をかかえたタビュランの過去と現在を描き出していく。
「むかしむかし、あるところに…」ではじまるようなどこか懐かしい物語。牧歌的な風景にちょっとした魔法が降りかかる。自転車はひとりでに動き出し、愛すべき気のいい小心者は大奮闘。ユーモア、やさしさ、可笑しさが詰まった、ほっと一息つける作品。

『クローゼットに閉じ込められた僕の奇想天外な旅』
10/12(土)-10/18(金) 「名画リレー」にて1週間のみ上映
The Extraordinary Journey of the Fakir/2018/仏、他/96分/監督:ケン・スコット/出演:ダヌーシュ、ベレニス・ベジョ、エリン・モリアーティ
「かわいい子には旅をさせよ」ということわざ通り、旅には不思議なちからと魅力がある。それに、できれば順風満帆よりもちょっとしたハプニングに見舞われるほうがなんとも楽しい。黒沢清監督が前田敦子を主演にした『旅の終わり、世界のはじまり』を観たときは、なんていいタイトル!とうっかり涙してしまった。旅の終わりの切なさと一緒に、世界はあたらしい形になってあたしたちの目の前に現れてくる。
『クローゼットに閉じ込められた僕の奇想天外な旅』も、せまい世界から飛び出し、出会いと困難を経験していく主人公アジャの恋物語であり冒険譚。母の死をきっかけに遺灰とパスポート、100ユーロの偽札をもって、父探しのためパリに向かう。そこから恋がはじまるも(まさに『(500)日のサマー』!)、クローゼットのなかで眠ってしまったアジャは、ロンドン、バルセロナ、ローマ、果てはリビアまで行ってしまう。不平等を呪い、運命に翻弄されつづけてきたアジャが、はじめて愛するひとのために必死でパリに戻ることを願い、用意された運命に抗おうとする。前向きな寓話に元気をもらえる作品。

『アンナ デジタルリマスター版』
10/19(土)-11/1(金) 2週間上映
Anna/1966/仏/86分/監督:ピエール・コラルニック/出演:アンナ・カリーナ、ジャン=クロード・ブリアリ、セルジュ・ゲンスブール
*10/19(土):ゲストに猫沢エミさん(ミュージシャン・文筆家)をお迎えしてトークイベントを開催いたします。
伝説の女優アンナ・カリーナの幻の主演作、ついにデジタル・リマスター版で21年ぶりに公開!
高校生のころのあたしは、アンナ・カリーナに夢中だった(もちろんいまでも、彼女を見るとうっかりため息!)。マスカラをばさばさとまつげに塗りたくり、くっきりしっかりひかれたアイライナー、鮮やかな衣装に身を包み、ネコみたいにころころと変わっていく表情!

『勝手にしやがれ』で一躍、時代の寵児となったジャン=リュック・ゴダールの60年代は、いわゆる”アンナ・カリーナ時代”だ。世間の笑いや涙を必要としなくなるまでに撮られた彼の数々の映画のなかでも、やっぱりアンナ・カリーナは特別な光を放ち、いまもなお色あせることなく、たくさんのファンに支えられながら、語り継がれている。1965年、エディ・コンスタンティーヌを主演に迎えた『アルファヴィル』は、ゴダールなりのSF映画だったが、エディ・コンスタンティーヌを起用した理由を「彼こそ真の火星人だから」、アンナ・カリーナの起用については彼女が「アンナ・カリーナだから」と答えたというインタビューは、あまりにも有名だ。

そのことば通り、ピエール・コラルニック監督がテレビ放映用ドラマとして撮った『アンナ』は、ポップでアンニュイな女優アンナ・カリーナの魅力をあますことなくカメラに収め、セルジュ・ゲンズブールの洒脱な音楽がこころとからだを躍らせる。田舎からパリにやってきたところを偶然駅の撮影に映りこんだアンナ。現像された写真に映りこんだ映りこんだ女の子に恋をしてしまった若社長のセルジュ。可笑しくなるほどすれ違うふたりの恋の行方を描いていく。遠いパリから届いたおとぎ話のようなこの映画は、ヌーヴェル・ヴァーグのミューズへの惜しみない愛と賞賛があふれた、おしゃれでちょっぴりおセンチなドリーミング・ミュージカルだ。

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  • 2019-09-24 - 2019-10-31
  • 00:00
  • 1800円、クラブ・フランス会員1500円(同伴者2名まで)
  • 075-353-4723
  • 京都シネマ
    〒 600-8411
    下京区烏丸通四条下る西側 COCON烏丸3F 京都市