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アンスティチュ・フランセ関西は、フランス映画をさらに身近に感じてもらい、様々な企画を通してフランス映画に親しんでもらうために、京都シネマと文化交流協定を締結しています。
京都シネマでは、クラブ・フランス会員証(有効期限内のもの)のご提示により、下記の映画を割引料金にてご覧頂くことができます。
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不器用な人々が主人公となって紡がれる物語というものに、どうしたって愛おしさを感じずにいられない。100パーセント完璧な人生はなく、あたしたちの人生はいつだって失敗つづき。だからこそ、不器用な人々の不器用な所作のすみずみに愛おしさとやさしさを見出しちゃうんだろう。そしてそんな不器用さのなかで、両足で踏ん張りながらも立つ主人公たちに勇気をもらえること間違いなしの3作品を紹介。

◎8/31から公開『ディリリとパリの時間旅行』。

アニメーションで独特の美しい世界をつくりあげるフランスのミッシェル・オスロ監督が19世紀ベル・エポックのパリを舞台につむいだ宝石箱のような作品。

混血の少女ディリリが友人オレルとともに、この時代を彩った天才たちの力を借りて、誘拐事件の謎を追い求めていく。女性たちの活躍がめざましかったこの時代に、それを疎ましくおもう悪者たちの悪事を暴き、奇想天外な方法で救出するディリリの冒険譚は、現代においてさまざまな人々といっしょに生きていくための、シンプルで基底になるべき思いが溢れている。パリの街を走り回るなかに、ひょっこり有名人たちがまぎれているのを探すのもたのしい。洗濯船に集う画家ピカソやマティス。マルセル・プルーストやアンドレ・ジッドら作家たちや、ロートレックの描いたラ・グリューやショコラたちが踊り、ガートルード・スタインやコレット、アリス・B・トクラスなど女性たちも数々登場。

*8/31(土)-9/20(金) 三週間上映

『ディリリとパリの時間旅行』

Dilili a Paris/2018/仏、他/94分/監督:ミシェル・オスロ/声の出演:プリュネル・シャルル=アンブロン、エンゾ・ラツィト、ナタリー・デセイ

8/31-9/6:字幕版/9/7-13:吹替版/9/14-20:字幕版

 

◎9/7から公開『マイ・エンジェル』。

南仏コート・ダジュールを舞台に紡がれる痛ましくも忘れられない母と娘の愛の物語。コート・ダジュール、紺碧の海岸とよばれるこの町は、アニエス・ヴァルダやエリック・ロメール、ジャック・ドゥミなどさまざまな映画人たちに愛され、映画の舞台として選ばれてきた。夏の暑い陽射しに照らされてなにかが起こりそうな予感、幸せのイメージ。けれど、この映画のなかの、夏が終わりを迎えつつあるコート・ダジュールは、煌びやかさのなかに孤独と危うさの緊張が走っている。愛し方がわからず愛を欲する母マルレーヌと愛を欲しながらも言葉でしめすことのできない8歳の娘エリー。貧しくも楽しく暮らすふたりだったが、マルレーヌは再婚相手に”不適切な現場”を見られたことで結婚が破綻、マルレーヌはひとりで姿をくらましてしまう。いわゆる”ダメ親”に陥らない、好きにもなれないけれど嫌いにもなれないというややこしい母親像を、名実ともに世界が認める女優マリオン・コティアールが熱演。不器用にも娘を大切にしようともがき、不安定に陥るマルレーヌは痛ましいほどリアルだ。また、名女優に負けず劣らず、エリー役を演じたアイリーン・アクソイ・エタックスの、母をもとめる複雑なまなざしとにじみでる強さは圧巻。姿をくらました母親の帰りを散らかったアパートでひとり待つエリーの孤独、自分や娘を大切にできず袋小路に立ち尽くしてしまうマルレーヌの孤独、そしてエリーが知り合う、夢半ばに破れた青年の孤独、三人の孤独が交差したときにやってくる拒絶と再生の物語は、紺碧の海と空のラストとともに、この夏忘れられない作品になりそうだ。

*9/7(土)-27(金) 三週間上映

『マイ・エンジェル』

PG12/Gneule d’Ange/2018/仏/108分/監督:ヴァネッサ・フィロ/出演:マリオン・コティアール、エイリーヌ・アクソイ=エテックス、アルバン・ルノワール

 

◎9/14から公開『Girl ガール』。

バレリーナを夢見るトランスジェンダーの少女ララが、心身ともに経験する痛みと葛藤を繊細に切り取り、各映画祭で絶賛の声が上がる一方で論争も巻きおこした話題作。男の身体で生まれてきた彼女は、父の支えもあって難関のバレエ学校へ入学を許可され、毎日血がにじむようなレッスンの日々を送りながら、ホルモン治療を進めていく。厳しいレッスンと、他のバレリーナから向けられる嫉妬心と嫌がらせ、15歳という年齢によって変化していく身体への焦りと不安が彼女を苛んでいく。あたしは思春期に女子の身体であることというのが、ほんとうに厄介だと思っていたし、つらいことも多かった。普通の生活でそうなんだから、バレリーナの世界はいっそうのこと、性を意識せずにはいられない世界だろう。そんななかで、鏡のまえで何度も身体をみつめるララの視線、自分の身体が完璧ではないとおもっているだれもが経験する視線をあたしは知ってる。それが女の子の身体を欲する男子の身体をした彼女が経験するんだから、あまりにも深い孤独と絶望は計り知れない。青いレオタードにしなやかな身体を包んだ彼女の、きつく結んだ口元から漏れる「だいじょうぶ」という言葉が、胸をせっつく。だいじょうぶじゃないとき、だいじょうぶだと言わないとすべてが壊れていってしまいそうなほどの不安定感、弱さをみせられない不器用なララのせめてもの弱さがこの「だいじょうぶ」と繰り返される言葉に滲みでている。彼女の内面のパラドックスと痛みを、カメラはじっくりと捉える。痛みでゆがんだ顔、自然な笑顔と顔に張りつけた笑顔、さまざまな表情でララを捉えたこの作品は、批判を聞くとなるほどと思うこともあるが、それでも傑作とよぶにふさわしい映画だ。

*9/14(土)-27(金) 二週間上映

『Girl ガール』

PG12/Girl/2018/ベルギー/105分/監督:ルーカス・ドン/出演:ビクトール・ボルスター、アリエ・ワルトアルテ

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  • 2019-08-31 - 2019-09-23
  • 00:00
  • 1800円、クラブ・フランス会員1500円(同伴者2名まで)
  • 075-353-4723
  • 京都シネマ
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