関西の知識人、文化人の方にご登場いただき、フランスの好きな作品をご紹介いただくシリーズ。第六回は、日本で唯一のバレエ専門学校の校長を務め、パリ・オペラ座バレエ団より毎年ダンサーを招いて公演を主催するなど(次回は「眠れる森の美女」全幕!)、京都でフランス流のバレエ教育と普及に努めておられる有馬えり子さんです。

 

◎今回ご登場いただくのは: 有馬えり子様

有馬龍子記念 一般社団法人京都バレエ団 代表理事、京都バレエ専門学校 校長

 

1.フランスにまつわるお好きな作品を教えて下さい
パリ・オペラ座バレエ団の「幻想交響曲」

 

2.作品を選ばれた理由は何ですか?

私が初めて海外バレエ団の公演を観たのは、来日したロシア ボリショイバレエ団の「白鳥の湖」「スパルタカス」でした。力強くアクロバティックな跳躍力、回転力に驚き、特に主役のウラディミール・ワシリエフのパワーあふれる肉体美とパワーには圧倒されました。その時、バレエはロシアだ!と思ったのです。

しかしその半年後、また初めての経験、パリに行くことになり、ガルニエ劇場にてパリ・オペラ座バレエ団の「幻想交響曲」を観ました。そして、今まで観たことのないバレエの優雅さに、雷に打たれたような感動を覚え、深い感銘を受けました。このバレエは美しいベルリオーズの音楽に振りつけられた世界最高峰のバレエ団ならではの傑作でした。パリの街で様々な芸術文化に触れ、毎日が感激の日々でしたが、豪華絢爛なガルニエ劇場、そしてその舞台で演じられるバレエに目から鱗。バレエの起源はフランスだ!と知ったのです。夢のように美しいワルツの舞。音楽にマッチした洒落た動きの中に、厳かで洗練された歴史を感じる品格。振り付けの中に真の感性と身体能力を見たように思われました。そしてこれこそが舞台芸術だ‼と思い立ち、フランスバレエを一生の生業にしようと決めたのです。ですから今でも大好きな演目の一つとなりました。

そして47年が過ぎ、ルイ14世によって生まれ育ったバレエを続けるうち実は日本文化との多くの共通点を見出すようになりました。日本とフランスは、歴史ある芸術文化において道を極める同じ心を持っていると感じるこの頃です。

 

さて、昨年12月、パリでは年金問題の為、ストライキが続きましたが、国家公務員である国立パリ・オペラ座バレエ団のダンサー達はこう言ってくれました。
「マダム、せっかくパリに来てくれたのに公演が中止になって申し訳ない。だけど僕たちは生活の為だけにデモをしているんじゃない。フランスの芸術文化であるバレエを継承しているダンサーこそが宝だとマクロンに認めて欲しい。世界一といわれるパリ・オペラ座バレエ団の地位を下げないでもらいたい。年金が下がったらバレエ団入団テストに世界中からやってくる優秀なダンサーがパリ・オペラ座を避けてロンドンやロシアに行ってしまうかも知れないよ。」

私はまたこの言葉に感動し、年末寒空の下、ガルニエ劇場前の石畳にて衣装を着けて踊り訴える団員たちの姿に心から拍手を送りました。

 

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写真:1枚目はパリ・オペラ座の芸術監督オレリー・デュポン女史と、2枚目はその時のガラコンサートにて、ガルニエ劇場が花で飾られていた時のお写真です。

次回公演のお知らせ:有馬龍子記念 一般社団法人京都バレエ団「眠れる森の美女」全幕
2021年1月9日(土) 会場:滋賀県立芸術劇場びわ湖ホール

新型コロナウイルスの影響により2020年7月25日(土)の予定でしたが、2021年1月9日(土)に延期致しました。

詳細はこちら:http://www.kyoto-ballet-academy.com/a_ballet.php

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いつも溢れんばかりの情熱で、バレエと向き合っておられる有馬先生。その原点となった作品との出会いから、当時の瑞々しく力強い感動が伝わってくるようです。

有馬先生、どうも有難うございました!

 

(パリ・オペラ座バレエ団の美しいストライキの様子もご紹介→https://www.afpbb.com/articles/-/3261115)

 

 

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