関西の知識人、文化人の方にご登場いただき、フランスの好きな作品をご紹介いただくシリーズ。
第七回は、シテ方五流宗家の中で唯一、関西を本拠地とする金剛流宗家の金剛永謹様です。

京都パリ友情盟約60周年、アンスティチュ・フランセ関西創立90周年を祝った2017年には、フランスの劇作家・詩人、ポール・クローデルの戯曲「女と影」を翻案した新作能「面影」が金剛能楽堂で上演されました。金剛流の長い歴史の中で外国作品が原作となったのは、これが初めてのことだったそうです。

 

◎今回ご登場いただくのは:

金剛流宗家 公益財団法人金剛能楽堂財団 理事長    金剛 永謹 様

金剛能楽堂HP:http://www.kongou-net.com/

 

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フランスでの金剛流の能の公演は1989年のフランス革命200年記念の年に開催された。

私はパリとオランジェにて能を舞った。200年祭に湧くパリは街の至る所で爆竹が鳴り響き、陽気で活気に満ち溢れていた。近年な曽祖父の舞台ビデオ(日本最古の能の映像)が収録されているアルベール・カーン美術館をこの時も妻と共に訪れた。
二月、極寒のパリは以前の印象とは打って変わった静けさの漂う、日常の姿のパリであった。


私自身は音楽を聴くのが唯一の趣味であるが、フランスの音楽で好んでよく聴く曲は、サン=サーンスの交響曲第3番、フォーレのレクイエムである。

この他ベルリオーズやドビュッシーもよく聴くが、ドイツや他の国の音楽と比べて、どの曲も色彩感覚が豊かで繊細なニュアンスに富んだフランス独特の魅力がある。それはモネなどの絵画と共通しており、いずれも印象派と呼ばれる所以であろう。パリの街を歩いていると薄青紫の霧のかかったような美しい色彩を至る所で感じる。この同じトーンが音楽や絵画、町の佇まいなどに流れているのだ。

文化にはその国固有の色彩、香りなどの風土、そして長年培われてきた歴史によって育まれた結晶であることを改めて感じさせてくれる。

 

世界は今、新型コロナウイルス禍に苦しんでいる。一日も早い収束を、そして私達を魅了してやまないフランスの美が一層の輝きを増して甦ることを祈らずにはいられない。

 

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クラシック音楽通の宗家ですが、フランス音楽についてお話しいただく機会はなかなかないのではないでしょうか。大変貴重な機会でしたが、フランス語を勉強する私達にも、お能がより一層身近に感じられそうですね。新型コロナウイルスが一日も早く収束し、お能の公演も早々に再開されることを祈っております。

貴重なお話をどうも有難うございました!

 

 

アルベール・カーン美術館:フランスの銀行家、アルベール・カーンは世界中に写真家を派遣し、膨大な写真・映像を収集しました。20世紀初頭に京都で撮影された金剛謹之輔氏の演能は、現存する最古の能楽映像です。隈研吾氏が新館を設計したアルベール・カーン美術館は、美しい日本庭園があることでも知られています。

Musée départemental Albert-Kahn HP(フランス語) http://albert-kahn.hauts-de-seine.fr/

メゾン・デ・ミュゼ・デュ・モンド HP (日本語) http://www.mmm-ginza.org/museum/serialize/mont-back/0708/montalembert.html

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