「イマージュと、それを見つめる者の間は、つねに平等であってほしい」―シャンタル・アケルマン
1975年、シャンタル・アケルマンは傑作『ブリュッセル1080、コメル23番街、ジャンヌ・ディエルマン』を撮り、映画に革命を起こしました。その後も、短編、長編、フィクション、ドキュメンタリー、実験的映画、文学の脚色など、様々なジャンルで新しい映画の形態を探求し続けました。アケルマンは現代映画の可能性を率先して見出し、ジム・ジャームッシュ、ガス・ヴァン・サント、トッド・ヘインズ、アピチャッポン・ウィーラセタクン、ミヒャエル・ハネケらも彼女から影響を受けています。
2015年10月に惜しくもこの世を去ったシャンタル・アケルマンを追悼すべく、「第19回カイエ・デュ・シネマ週間」にて特集を行います。
[上映スケジュール]
会場 アンスティチュ・フランセ関西―京都
2.16(火) 18:00 家からの手紙 News from home[89分]
*上映後、ニコラ・エリオットと北小路隆志氏による対談あり(逐次通訳付)
■ 入場料金:一般1000円、クラブ・フランス会員500円
会場 京都シネマ
3.5(土) 19:15 ブリュッセル1080、コメルス河畔通り23番地、ジャンヌ・ディエルマン Jeanne Dielman, 23, quai du commerce, 1080 Bruxelles[200分]
3.6[日] 19:15 私、あなた、彼、彼女 Je, tu, il, elle[90分]
3.7[月] 19:15 東から D’Est[110分]
*上映後、北小路隆志氏によるレクチャーあり
3.8[火] 19:15 街をぶっ飛ばせ Saute ma ville[13分]、部屋 La Chambre[11分]、ホテル・モンタレー Hôtel Monterey[63分]
3.9[水] 19:15 アメリカン・ストーリーズ/食事・家族・哲学 Histoire d’Amérique[92分]
3.10[木] 19:15 アメリカン・ストーリーズ/食事・家族・哲学 Histoire d’Amérique[92分]
3.11[金] 19:15 No Home Movie No Home Movie[115分]
■ 入場料金:一般1300円、シニア1100円、学生800円、京都シネマ会員/クラブ・フランス会員800円 ■ チケット販売開始時間:当日、開館時より販売(開場時間は劇
場までお問い合わせください/当日券のみ、前売券の販売はございません/本編開始後のご入場はおことわりいたします/整理番号順でのご入場・全席自由席/場内でのお
食事はご遠慮ください)
会場 シネ・ヌーヴォ
2.13[土] 16:00 私、あなた、彼、彼女 Je, tu, il, elle[90分]
*上映後、ニコラ・エリオットのレクチャーあり
3.12[土] 16:10 ブリュッセル1080、コメルス河畔通り23番地、ジャンヌ・ディエルマン Jeanne Dielman, 23, quai du commerce, 1080 Bruxelles[200分]
3.13[日] 17:00 東から D’Est[110分]
3.14[月] 20:10 東から D’Est[110分]
3.15[火] 17:00 街をぶっ飛ばせ Saute ma ville[13分]、部屋 La Chambre[11分]、ホテル・モンタレー Hôtel Monterey[63分]
3.16[水] 17:00 アメリカン・ストーリーズ/食事・家族・哲学 Histoire d’Amérique[92分]
3.17[木] 20:10 アメリカン・ストーリーズ/食事・家族・哲学 Histoire d’Amérique[92分]
3.18[金] 17:00 No Home Movie No Home Movie[115分]
■ 入場料金:一般1300円、シニア1100円、学生800円、シネ・ヌーヴォ会員/クラブ・フランス会員800円 ■ チケット販売開始時間:期間中連日朝より販売(当日券のみ、
前売券の販売はございません/整理番号順でのご入場・全席自由席)
作品紹介
街をぶっ飛ばせ Saute ma ville
[ベルギー/ 1968年/13分/デジタル/モノクロ/台詞なし]
出演:シャンタル・アケルマン
若い女性が鼻歌を歌いながら、料理をすると思いきや、キッチンをめちゃく
ちゃにし、壁を汚し、顔に食べものを塗りたくる。そして驚くべきラストへと向
かっていく。
アケルマンがブリュッセル映画学校の卒業制作として撮ったこの13分の処
女作にアケルマン作品の原型がすでに認められることに驚きを禁じえない。
―E・ブルトン(『ブレフ』)
私、あなた、彼、彼女 Je, tu, il, elle
[ベルギー=フランス/1975年/ 90分/デジタル/モノクロ/日本語字幕]
出演:シャンタル・アケルマン、ニエル・アレストリュプ、クレール・ワティオン
アケルマン演じる若い女性の人生の4つのスケット。女性は部屋で家具を動
かしたり、手紙を書いたり、砂糖を食べたりしている。部屋を出て、トラック
運転手と出会い、彼に体を委ねる。その後、部屋に戻り若い女性との親密な
る時を経て、ふたりは愛を交す。
観客は絶えず緊張感を持って彼女の道程を追い続ける。そこにはアケルマン
自身がよぶところの「逸楽」があるのだろう。―ジャン・ナルボニ(「カイエ・デュ・シネマ」276号)
ホテル・モンタレー Hôtel Monterey
[ベルギー/1972年/63分/デジタル/カラー/サイレント]
ニューヨーク、マンハッタンにある安ホテル。アケルマンの眼差しによって、神
秘と、予期せぬ美しさをともなって、廊下、エレベーター、部屋、窓、宿泊客
(老人たち、ホームレス、犯罪者など)がまるでエドワード・ホッパーの絵画
を想起させるように、精彩を帯びてくる。本作はまた「声を持たないアメリカ」
についての映画でもあり、マイケル・スノーら、70年代のアメリカ実験映画の
影響を感じられる。
ブリュッセル1080、コメルス河畔通り23番地、ジャンヌ・ディエルマン
Jeanne Dielman, 23, quai du commerce, 1080 Bruxelles
[ベルギー=フランス/1975年/ 200分/デジタル/カラー/日本語字幕]
出演:デルフィーヌ・セイリグ、ジャン・ドゥコルト、アンリ・ストルク、ジャック・ドニオル・ヴァルクローズ
45歳のジャンヌは、16歳の息子と二人で暮らしている。息子が学校にいって
いる間、彼女は「客」をとっている。湯を沸かし、ジャガイモの皮をむき、買い
物に出かけ、食事をし、眠りにつく…。アケルマンはジャンヌの「平凡な」暮ら
しを執拗なまでに描写しながら、やがて訪れる反日常に至るぞっとするよう
な時空間を見事に作り出している。
部屋 La Chambre
[ベルギー/ 1972年/11分/デジタル/カラー/サイレント]
出演:シャンタル・アケルマン
360度のパノラマ撮影によって、キャメラがゆっくりと、異なる速度である住
居の二つの部屋、台所と寝室としても使用されているリビングを回転しなが
ら映していく。ベッドには一人の女、アケルマンが横たわっている。
ベッドの中にいるシャンタルの仕草が完全にとらえられることはない。彼女は
女優となり、この作品はその女優による曖昧なる仕草の示唆によって映画と
して存在し始める。―バベット・マンゴルト(『映画作家における自画像』、
カイエ・デュ・シネマ/ポンピドゥー出版、2004年)
家からの手紙 News from home
[ベルギー=フランス/1976年/89分/DVD/カラー/英語字幕]
トラベリング、あるいは固定ショットで映される1976年のニューヨークの街
並みに、1971年から1973年の滞在中に母からの手紙を読むアケルマンの
声がかぶさる。母からの手紙、それはシンプルながら愛にあふれた言葉、不
可能なる抱擁だった。アケルマンのニューヨークの忘れがたいタイムカプセル
は、都会における疎外感、そして家族の断絶についてのすぐれた考察でもある。
アメリカン・ストーリーズ/食事・家族・哲学
Histoire d’Amérique : food, family, and philosophy
[フランス=ベルギー/ 1988年/92分/35ミリ/カラー/日本語字幕]
出演:エスター・バリント、マーク・アミティン、ステファン・バリント、カーク・バルツ
靄の中からニューヨークの街が姿を現わす。夜、ウィリアムズバーグ橋を背に
して、ひとりの若い女性が少しおびえたような様子で自分のエピソードを語り、
立ち去る。その後も次々に老若男女が現れて、自分たちの人生の断片を語っ
ていく。彼らはヨーロッパから移住してきたユダヤ系の人たちだ。記憶と忘却
の間で、それぞれのアメリカン・ストーリーが語られる。これらすべての「証言
者たち」はニューヨークに住むユダヤ人俳優たちによって演じられ、そのこと
によってフィクションとドキュメンタリーが融合していく。
東から D’Est
[フランス=ベルギー/1993年/ 110分/35ミリ/カラー/台詞なし]
場所の名前が表示されることも、ナレーションもなく、雪に覆われた夜の道
や大きな駅で凍えながら重なり合って待っている人々が横移動のトラベリン
グでとらえる。家の中では蓄音機から感傷的な曲が流れる。ソ連の崩壊後の
旧共産主義国の都市、そしてそこに暮らす人々の日常生活についての強烈に
心をとらえるドキュメンタリー。
東欧の人々の顔、私はそれらをすでに知っていて、ほかの顔を思い出させもし
た。人々の待つ列やいくつもの駅、それらすべてが私の中で反響し、私の歴史
の裂け目、想像の世界と共鳴していた。―シャンタル・アケルマン
No Home Movie No Home Movie
[ベルギー=フランス/2015年/115分/デジタル/カラー/日本語字幕]
アケルマンの最新作にして遺作となった本作は、アケルマンと母親の関係につ
いての心揺さぶられる親密なるポートレートである。ポーランド系ユダヤ人で、
アウシュヴィッツ生存者である母はアケルマンの映画づくりの原点であり、この
作品は彼女の映画史の出発点を探るドキュメンタリーでもある。
プログラム協力・ゲスト ニコラ・エリオット(「カイエ・デュ・シネマ」ニューヨーク特派員)
スペシャル・ゲスト 北小路隆志(映画批評家)
[お問い合わせ]
アンスティチュ・フランセ関西―京都
〒606-8301 京都市左京区吉田泉殿町8
☎075-761-2105 kansai@institufrancais.jp
アンスティチュ・フランセ関西―大阪
〒530-0041 大阪市北区天神橋2-2-11 阪急産業南森町ビル9F
☎06-6358-7391 kansai.osaka@institutfrancais.jp
[会場]
京都シネマ
京都市下京区烏丸通四条下る西側COCON烏丸3F
☎075-353-4723 www.kyotocinema.jp
シネ・ヌーヴォ
地下鉄中央線「九条駅」/阪神なんば線「九条駅」より徒歩3分
☎06-6582-1416 www.cinenouveau.com/
掲載写真クレジット:.DC
- 2016-02-13 - 2016-03-18