(フランス/1915/モノクロ/サイレント・ピアノ伴奏付き)

監督:ルイ・フイヤード
出演:エドゥアール・マテ、ミュジドラ、マルセル・レヴェスク

<吸血鬼たち>を意味するレ・ヴァンピールと呼ばれるギャング団が出没する1910年代のパリ。ベル=エポックのこの美しい都会で繰り広げられる、不思議な犯罪の大長編絵物語。

パリの新聞社に勤務するフィリップ・ゲランドは、頻発する怪事件を捜査してゆく中で、これらの事件がヴァンピール一味によって仕組まれていることを知る。この不思議なギャング団のボスは大ヴァンピールと呼ばれており、変装の名人で、様々な人間に成りすまして、金品の強奪や殺人を繰り返す。このギャング団のミューズはイルマ・ヴェップという女性で、彼女は黒い全身タイツを身にまとい、館の内部に忍び込んで大ヴァンピールから受けた指令を遂行する。一方、ヴァンピール一味とはまた別に、モレノとという催眠術を得意とする悪漢のグループが似たような凶悪犯罪を展開させ、新聞記者フィリップ・ゲランドを取り巻く状況は、さながら不条理な悪の迷宮のような様相を呈してくる。1915年から1916年にかけて製作・上映された連続映画「レ・ヴァンピール」は第一次世界大戦中の、フランス映画にとっては危機的状況の中にあって、その想像を超えるような物語展開によって大成功を収めた。当時、ヴァンピールの女首領イルマ・ヴェップが人気を呼び、役を演じた女優、ミュジドラをシュルレアリストたちが絶賛した。

 

第1話 首なし死体

新聞「ル・モンディアル」の記者フィリップ・ゲランドは、パリで暴れ回っている犯罪組織「レ・ヴァンピール(吸血鬼ギャング団)」を調査していた。彼が作成したファイルがオフィスから盗まれる。犯人はすぐに見つかり、マザメという新聞社の社員だった。彼は家族を養うために恐ろしいギャングに加わっていたのだ。マザメットは償い、許される。フィリップは父の旧友であるノックス博士と、アメリカの大富豪シンプソン夫人が所有するラ・シェネー城に向かう。そこではちょうどヴァンピールの捜査を担当していたデュルタル警部の首が切られた死体が発見されたところだった。夜中に目を覚ましたフィリップのポケットには、「捜索をあきらめろ、さもなくば不運が待っている!」というメモが残されていた。控えの間に戻ると、シンプソン夫人が死んでおり、ノックス博士が姿を消していることがわかる。彼のポケットにはd大ヴァンピールからのメモが入っていた。グラン・ヴァンピールは本物のノックス博士を殺害し、成り代わっていたのだ。1915年11月13日公開(39分)

第2話 殺しの指輪

ノワールムティエ伯爵に変装した大吸血鬼は、フィリップと婚約しているバレリーナのマルファ・クーティロフが『吸血鬼』というバレエを上演すると読み取る。幕間にノワールムティエ伯爵が彼女を祝福に訪れ、毒の指輪を差し出した。彼女は舞台の上で倒れる。群衆がパニックになる中、フィリップは大ヴァンピールに気づき、彼を追って廃墟となった砦に行き、レ・ヴァンピール一味に捕らえられ、フィリップは夜明けに処刑されることに。1915年11月13日公開(17分)

第3話 赤い暗号文

フィリップ・ゲランドは、大審問官の遺体から持ち出したヴァンピールたちの活動を記した赤い革の小さなノートを解読することに専念していた。吸血鬼に追われる身となったゲランドは、新聞への寄稿を辞めざるを得なくなる。そんな中、フィリップは変装し、冊子の手がかりを頼りに、ナイトクラブ “The Howling Cat “に辿り着く。そこで出演していたのがイルマ・ヴェップであり、フィリップはその名前がヴァンパイアのアナグラムであることに気づく。大ヴァンピールはイルマに赤い小冊子の回収を命ずる。フィリップが帰宅すると、マザメが大ヴァンピールから盗んだ毒ペンとともに到着する。数日後、イルマは新しいメイドに変装して彼らの家にやってくるが、フィリップは彼女に気づく。彼女は彼を毒殺しようとするが、失敗する。ヴァンピール一味はフィリップの母親を誘拐するが、マザメが見つけた毒入りのペンのおかげで、彼女は牢番を追い払って脱出することに成功する。1915年12月4日公開(48分)

ミュジドラ演じるイルマ・ヴェップのキャラクターがこの第3話で初めて登場し、当時の観客たちに強い印象を与える。

「私たちを魅了したのは、押しつけられた道徳が私たちから奪ったもの、奢侈、パーティー、悪徳の大オーケストラ、そして女性像、それも英雄的で、とんでもない冒険家としての女性像だった。このような心理状態を正確に記録したものがあった。ある世代が世界に対して抱いていた考え方は、映画で形成されたもので、それを要約したのが連続ドラマだった。当時の若者たちは、こうして『レ・ヴァンピール』の中のミュジドラにすっかり恋をしてしまったのだ」ルイ・アラゴン

 

*ピアノ伴奏付き(柳下美恵)

 

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  • 2023-03-24 - 2023-03-24
  • 16:30
  • 開場:15分前
  • 1,000円 ※チケットは Peatixにて3/9(木)15時より販売いたします。
  • 東京日仏学院(03-5206-2500)
  • 上映開始10分後以降の入場は、他のお客さまへの迷惑となりますので、お断りいたします。
  • アンスティチュ・フランセ東京 エスパス・イマージュ
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