日仏の人気作家のトークイベント

第二回ゴンクール賞日本の授賞式に合わせて、第一回ゴンクール賞日本の受賞作「うけいれるには」の著者である

クララ・デユポン=モノ氏が来日し、人気作家の宮下奈都氏と対談します。

 

クララ・デュポン=モノ

宮下奈都 (c)

 

ノーベル賞、ブッカー賞とならんで三大文学賞のひとつに数えられるゴンクール賞。この賞は、作家であったゴンクール兄弟(エドモンとジュール)が築いた財産をもとに設立されたフランスでもっとも権威のある文学賞です。

日本でもフランスのゴンクール・アカデミーの委嘱を受けて、ゴンクール賞日本委員会とアンスティチュ・フランセ日本が共同で主催する「ゴンクール賞日本」が開されています。フランスのゴンクール賞の最終候補作品を、各国の学生がフランス語で読み、自分達の気に入った作品を選ぶという催しです。第一回の受賞作には『うけいれるには』(原作S’adapterはストック社より2022年出版、日本では松本百合子訳で早川書房より2023年3月に刊行)が選ばれました。

なぜ本作品が「第一回ゴンクール賞日本」受賞作に選ばれたのか ?

本作品は、重度の障害を抱え長く生きることのできなかった子供とその家族をめぐる物語 であり、「ケア」という普遍的な問いを投げかける作品であるといえる。ところが、ここに困難が立ち現れる。見ることも話すこともできない中心人物たる「子供 l’enfant」(小説を通し てこのように呼ばれる)は、語り手にも視点人物にもなることができないからだ。そこで子 供と他の登場人物を橋渡しする役目を務めるのが中庭の石たち(nous)である。石は、家族 の中心に穿たれた空洞を取り囲むかのように(creux は頻出する鍵語である)、間接話法も交 えながら自在に兄弟(長男、長女、末っ子)の内面に入り込み、その視点から「子供」の世 界も垣間見せつつ、それぞれの兄弟の成長を見届ける物語の伴奏者である。それゆえ、この 小説の焦点は障害のある子供そのものではなく、むしろ、家族のあり方そのものを一変させ たこの子供に対する他の兄弟たちの考えや態度がどのように揺れ動き、また、困難な状況に 対して各々の子供たちがどのように「合わせていく s’adapter」のかを描き分けることにあるのだ。

障害をもった家族を前にして子供たちが「適応していない inadapté」こと を悟り、そこからどのように「適応 s’adapter」していくのかを描く展開は、誰もが登場人物 へと自己投影することができ、あるいは「自分自身の読者」(プルースト)になることがで きるという意味で多くの読者を惹きつけるものである。また石たちを媒介に人間の時間軸を 超えるコスミックな次元へと広がるような自然描写や、障害を抱えた子供を含む登場人物た ちの五感の繊細な描写が生み出す散文詩のような美しさにも目を見張るものがある。

2022年学生選考委員の議論の総括:中江太一(東京大学大学院)訳:ゴンクール賞日本組織委員会

登壇者

クララ・ディユポン=モノ

1973年、フランス生まれ。大学で古フランス語を学んだあと、ジャーナリストとして活躍する。1998年、作家デビュー。中世を舞台にした小説を多く執筆する。2021年にフランスで刊行した本書『うけいれるには』で高校生が選ぶゴンクール賞、フェミナ賞、ランデルノー賞を受賞し、2022年には、日本でフランス語やフランス文学を学ぶ学生が投票する、第1回日本の学生が選ぶゴンクール賞を受賞した。

フランスの地方に暮らす幸せな一家。ある日、第三子が重い障がいを抱えていることが分かった。長男はかいがいしく第三子の世話に明け暮れるが、長女は彼の存在に徹底的に反発する。障がいのある子どもが誕生した家庭の心の変化を、静謐な筆致で描く感動長篇。

 

宮下奈都

1967年福井県生まれ。上智大学文学部哲学科卒。2004年、「静かな雨」が文學界新人賞佳作に入選、デビュー。2007年に発表された長編『スコーレNo.4』はTBS「王様のブランチ」や「本の雑誌」などで絶賛され、スマッシュヒット。『誰かが足りない』が2011年の本屋大賞にノミネートされた。その他の著書に『遠くの声に耳を澄ませて』『よろこびの歌』『太陽のパスタ、豆のスープ』『田舎の紳士服店のモデルの妻』『ふたつのしるし』『たった、それだけ』など。15年『羊と鋼の森』で本屋大賞を受賞。著者近著『とりあえずウミガメのスープを仕込もう。』(扶桑社)

ピアノの調律に魅せられた一人の青年。
彼が調律師として、人として成長する姿を温かく静謐な筆致で綴った、祝福に満ちた長編小説。

「生命を持ち、呼吸し、歌をうたう羊と鋼の森、ピアノに対する概念を決定的に変える作品」ピッキエ社の作品紹介より。

フランス語版がピッキエ社より刊行:翻訳マチルド・タマエ⁼ブフォン

司会 深井 陽介

東北大学准教授

私は今まで一貫して、19世紀フランスの詩人、アルチュール・ランボーのテクストを研究してきました。パリ第4大学博士論文『ランボーの多声性』では、主に『地獄の季節』を分析対象とし、同一テクスト内に度々現れる、発話の多声性、引用に基づく多声性、文学ジャンルの複数性、当時の文化的背景や歴史的コンテクストに基づくディスクールの異質性の4つの観点から分析しました。
現在は、ランボーと第一次ロマン派の関係に関心があります。私のもう一つの研究軸はフランス語教育学です。2013年度にフランス語教授法の資格を取得し、アクティブラーニングを用いた授業を積極的に展開しています。近年はグループワークの有効性の研究や、キャリア形成を目的としたフランス語教育にも関心があります。また、発信型フランス語教授法の一環として、フランス語のみを使った短編映画を製作し、YouTubeに発表しています。

イベント概要

 

日時 :  2023年3月28日(火)

時間 : 18時30-20時00

言語 : 日本語ーフランス語 同時通訳付き

主催 : 在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ日本 ゴンクール賞日本組織委員会

協力 : 早川書房

 

会場

東京日仏学院

東京都新宿区市ヶ谷船河原町15

Tel: 03-5206-2500

Espace image

Peatix より予約をお願いします:

 

03
28
  • 2023-03-28 - 2023-03-28
  • 18:30 - 20:00
  • Institut français Tokyo - Espace images
    〒 162-8415
    15 Ichigaya-funagawara-machi, Shinjuku-ku Tokyo