生前にはほとんど知られることがなく、ひっそりと映画を作り続けてきた稀有な作家ギィ・ジル。ようやくここ何年かの間で、ラ・ロシェル映画祭、ルサス映画祭、パンタン短編映画祭などで特集が組まれるようになり、シネマテーク・フランセーズで全作を上映する回顧特集が開催されると、一気にパリの映画ファンたちに発見されました。以降、世界各地で紹介され注目を集めています。今回の特集では、そんなギィ・ジルの作品の中でも最も美しい初期作3本を同時上映します。

3本目上映後、岡田秀則氏(映画研究者)によるアフタートークを予定しています。

 

© DR

1400 『海辺の恋』  L’Amour à la mer

(フランス/1963年/73分/カラー&モノクロ/デジタル/フランス語/日本語字幕)
出演:ジュヌヴィエーヴ・テニエ、ダニエル・ムスマン、ギィ・ジル、シモーヌ・パリ、ジャン=ピエール・レオ、ジャン=クロード・ブリアリ

 ジュヌヴィエーヴは恋人である水兵のダニエルと海辺の街ドゥーヴィルで落ち合い、愛し合う。ヴァカンスが終わり、ダニエルはブレストの駐屯地に、ジュヌヴィエールはパリに戻り、手紙を綴り、再会することを待ち望みながら、それぞれの生活を送る。ダニエルと同様にアルジェリア戦争からフランスに戻ってきた水兵、ギイの感情がふたりのそれと混ざり合っていく。ギイ・ジル自身が同名の「ギイ」役で出演しており、彼の人生が語られる部分が主人公ふたりの人生と響きあい、作品をポリフォニックな深みを与えている。

 

© DR, coll. Cinémathèque française

 15:40~ 『切られたパンに』  Au pan coupé

(フランス/1967年/71分/カラー&モノクロ/デジタル/フランス語/日本語字幕)
出演:パトリック・ジュアネ、マーシャ・メリル、ベルナール・ヴェルレ

ジャンヌはかつての恋人ジャンを思い出し、今も彼との恋を生きている。ジャンは15歳で少年院に入り、既成秩序に反抗し、ブルジョワ的な世界もビート族たちの世界も拒否して死んでいった。彼の死を知らないジャンヌには、つねにジャンが亡霊のように寄り添っている。

「この作品での愛は顔によって想起させられ――何度も繰り返し見せられる女性の顔、視線、――それにはただただ感嘆させられる。そう、こうした試みはこれまで一度も映画でなされたことがなかっただろう。」(マルグリット・デュラス)

 

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17:10~ 『地上の輝き』  Le Clair de terre

(フランス/1969年/102分/カラー&モノクロ/デジタル/フランス語/日本語字幕)
出演:パトリック・ジュアネ、エドウィジュ・フィエール、アニー・ジラルド、ミシュリーヌ・プレール

チュニジア生まれで、母の死まで幼年期をその地で過ごしたピエールは現在、パリのマレ地区、ロジエール通りに父親と住んでいる。突如、パリを離れる必要を感じたピエールは再びチュニジアの首都チュニスに向かう。そこでかつての教師に導かれ、自分の過去の形跡を辿っていくことになる。

 

 

<監督プロフィール>

ギィ・ジル(1938-1996)

1938 年、アルジェリアの首都アルジェ生まれ。子供の頃より映画ファンで、20歳で13分の美しい処女短編作品『消された太陽』を監督、すでに本作にその後の作品で繰り返し描かれることになるテーマ、つまり亡命、メランコリー、記憶の重さと現在への官能と、不確かな未来、若者が率直に表明する感情などが発見できる。アルジェリア戦争下の1960年、ギイ・ジルはパリへと移住。ピエール・ブロンベルジェの援助により、何本か短編を監督し、その中の『Au biseau des baisers』を非常に気に入ったジャン=ピエール・メルヴィルが資金の一部を援助してくれ、初長編である自伝的作品『海辺の恋』を3年がかりで製作。撮影中、ジルの作品、そして彼の人生において大変重要な存在となるパトリック・ジョアネと出会う。結局ほとんどを自主制作し、あまりにも商業ベースから離れていたため、劇場公開されることがなかったが、それでも各地の映画祭で紹介され、1964年ロカルノ映画祭で批評家賞を受賞。長編二作目『切られたパンに』(67)の企画は主演した女優マーシャ・メリルが本作のために自ら製作会社を設立し、実現し、マルグリット・デュラスらから賛辞の言葉が寄せられた。三作目『地上の輝き』(70)はイエール映画祭グランプリ受賞。四作目の『反復される不在』(72)はその年最も優れた作品に与えられるジャン・ヴィゴ賞を受賞。これら初期4作品にはすでにギイ・ジル映画の最良の部分が詰め込まれており、一部の批評家から評価されるも、興行的にはまったくあたらず、ますます困難な製作状況へと追いやられる。何本もの企画が流れたのちにようやく発表したデルフィーヌ・セイリング、サミー・フレイ、ジャンヌ・モローら出演のフィルム・ノワール的作品『Le Jardin qui bascule』(74)は、時代におもねっているとされるふしもあるが、ジルにとって特別な存在であった女優モローが歌うシーンなど、魅力溢れる作品となっている。1987年一人の男が夜の街を徘徊する『夜のアトリエ』は、ジルにとってかけがえのない存在だったパトリック・ジョアネとの物語に終止符を打つ感動的一作。注文されたテレビ作品やドキュメンタリーも多く手がけ、その中にはジルにとって重要な二人の作家、マルセル・プルーストとジャン・ジュネについての2本の美しいドキュメンタリー『プルースト、芸術と苦悩』(71)と『聖人、殉教者、詩人』(75)がある。壊されて行く街の小さな映画館にオマージュを捧げた『シネ・ビジュ(映画=宝石)』 (65)も貴重なドキュメンタリーである。

「ユスターシュやガレルとさほど遠くない、従兄弟のような存在でありながら、人目にあまり触れることなく映画を撮り続けていたギィ・ジル、彼の映画は忘却に抗う力を秘めていて、今回その最も美しい作品群を日本で初めて特集する。ギィ・ジルはその最期までヌーヴェルヴァーグの作家たちからもあまり愛されることなく、理解されることのない弟分のような存在であったが、監督としてデビューした初期の時代に『地上の輝き』(1969)や『反復された不在』(1972年)といった傑作を残している。『反復された不在』はジルの最も美しくも、最も悲しい作品であり、ジャンヌ・モローの声が作品全体に宿っている。つねに悲哀を帯び(母の死、惨憺たる恋愛体験、アルジェからパリへの亡命が痕跡を留めている)、自伝的要素の強い叙情性やロマンティスムへの陶酔を表現しているかのような特異な色使い、そして記憶への過度なる感受性で焼け焦げ、渦を巻くような運動に調和するかのような、非常に創意に富んだエクリチュールが編集によってなされているギィ・ジルの作品は、フランス映画の偉大な詩人たちについての正式なる歴史の中には、遺憾ながらも、まだ十分なる場所を見出してはいない。」(ジュリアン・ジェステール)

 

 <ゲストプロフィール>

岡田秀則 Hidenori Okada

1968年生まれ。国立映画アーカイブ(旧:東京国立近代美術館フィルムセンター)主任研究員として、映画のフィルム/関連資料の収集・保存や、上映企画の運営などに携わり、2007年からは映画展覧会のキュレーションを担当。また内外の映画史を踏まえた論考、エッセイを多数発表している。著作に『映画という《物体X》』(森話社)、共著に『クリス・マルケル 遊動と闘争のシネアスト』(森話社)など。

 

★チケット販売
前売券の販売はございません。当日券は、会場の東京藝術大学(横浜・馬車道校舎)にて1本目の開演30分前より販売、現金支払いのみ。
*開場は、1本目開演30分前、2本目開演20分前より。1本目から3本目までのチケットを同時にご購入いただけます。
*全席自由・番号順でのご入場・各回入替制。
*プログラムはやむを得ない事情により変更される場合がございますが、予めご了承ください。

 

第1回 映画/批評月間 ~フランス映画の現在をめぐって~ 
主催:アンスティチュ・フランセ日本
助成:アンスティチュ・フランセパリ本部、ユニフランス
アンスティチュ・フランセ日本 映画プログラム オフィシャル・パートナー:CNC、笹川日仏財団、TV5 MONDE
フィルム提供及び協力:シネマテーク・フランセーズ、エチェ・フィルム、ゴーモン、国立視聴覚センター、株式会社クロックワークス、ロブスター・フィルム、MK2、プレイタイム、トランスフォーマー、ワイルド・バンチ
特別協力: ユニフランス、Bart.lab

後援:横浜市文化観光局

06
29
  • 2019-06-29 - 2019-06-29
  • 一般1200円/アンスティチュ・フランセ会員・学生:600円/東京藝術大学の学生無料 (一般の方は、同日2作品セット1,800円、3作品セット2,400円)
  • 045-201-1514
  • 東京藝術大学 (横浜・馬車道校舎)大視聴覚室
    〒 〒231-0005
    4-44 中区本町 横浜市

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