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2015年1月7日、風刺週間紙「シャルリ・エブド」がテロリストたちに襲撃され、12人の市民が殺害されました。あらゆる宗教的原理主義を風刺画とユーモアで皮肉る同紙の編集方針は、以前から原理主義者の恨みを買っていました。翌日には、女性警官がパリ近郊のモントルージュの街中で銃弾に倒れました。そして1月9日、パリ市内のポルト・ドゥ・ヴァンセンヌのユダヤ食品店で、4人のユダヤ系フランス人が、人質にされたうえ惨殺されました。

1月11日にパリで行われた全国追悼集会 – © MAEDI/F. de la Mure

1月11日にパリで行われた全国追悼集会 – © MAEDI/F. de la Mure

1月11日にアンスティチュ・フランセ東京で行われた追悼集会 – ©DR

1月11日にアンスティチュ・フランセ東京で行われた追悼集会 – ©DR

 

2015年1月7日、風刺週間紙「シャルリ・エブド」がテロリストたちに襲撃され、12人の市民が殺害されました。あらゆる宗教的原理主義を風刺画とユーモアで皮肉る同紙の編集方針は、以前から原理主義者の恨みを買っていました。翌日には、女性警官がパリ近郊のモントルージュの街中で銃弾に倒れました。そして1月9日、パリ市内のポルト・ドゥ・ヴァンセンヌのユダヤ食品店で、4人のユダヤ系フランス人が、人質にされたうえ惨殺されました。

 

この一連の悲劇的な事件の直後、犠牲者と遺族に対して連帯を示すデモが世界各地で行なわれました。1月10日・11日の週末、フランスでは400万から500万の人々が表現の自由を守るために、静かな、そして毅然とした雰囲気のなかで抗議行動に参加しました。このデモには各国の国家元首を始め50人前後の国際的著名人が駆けつけ、オランド大統領ならびにパリ市民と列を成して行進しました。

 

ここ日本では、安倍総理大臣と岸田外務大臣がフランス大使公邸を訪れ、犠牲者の遺族に弔意を表しました。また、フランス大使館とアンスティチュ・フランセ日本の各支部で行なわれた集会には、たくさんの日本人も参加しました。アンスティチュの受講生の多くが共鳴し連帯の念を示してくれました。アンスティチュと取引のある方々からも、多くの温かいメッセージをいただきました。この場を借りて心より御礼申し上げます。

 

新しい一年が始まったばかりですが、今回の事件とその波紋は、アンスティチュ・フランセ日本にとって、私たちが大切にしている価値観を明確にするきっかけになると同時に、日仏文化交流という私たちの使命を、謙虚に、そして誇りを以って成し遂げるための励みとなります。

 

ジャーナリストを殺害することで、テロリストたちは表現の自由を脅かそうとしました。しかし表現の自由が保障されているフランスや日本のような民主主義国では、真理を説く場合であっても、話し合いのプロセスを免れません。テロリストたちの行動は却って、どのような事柄についても、いつでもどこでも議論することの大切さを強く認識させるとともに、アンスティチュが毎年招聘する、作家や思想家、研究者など、ヒューマニズムや少数派を代弁する人々の声が、いかに貴重なものであるかを、改めて認識させました。

 

風刺画家を殺害することで、テロリストたちは、創造の自由と、それがもつ啓蒙する力、批判する力、既存の秩序をひっくり返す力を潰そうとしました。テロリストたちの行動は却って、アーティストの社会的影響力、映画や現代アートが持つ現実を描写する力、作品が持つ政治性を認識させました。

 

ユダヤ教信者のフランス人を殺害することで、テロリストたちは共生の概念を攻撃し、フランスが誇りとしていることを脅かそうとしました。即ち出自、信仰、主義主張を問わず、国民の一人一人が安全に暮らすことのできる、受容と交流の国であるということです。テロリストたちの行動は却って、フランスにおいて活力と成功を見出そうとする世界中の学生や研究者、芸術家や工芸家に常にそしてより一層開かれた国であろうとする私たちの決意を強め、無知、愚行、歴史修正主義、非寛容に対して、この国の理念をより固く守っていかなければならないことを想い起こさせました。

 

この時期、年頭の挨拶を申し上げるのが慣わしですが、アンスティチュ・フランセ日本の職員一同、1月7日、8日、9日に犠牲者を追悼するとともに、徐々にユーモアが復活することを願っています。それこそが、シャルリ・エブド紙の願いであるに違いないからです。

 

アンスティチュ・フランセ日本
職員一同