関西の知識人、文化人の方にご登場いただき、フランスの好きな作品をご紹介いただくシリーズがスタートします!

第一回は、京都大学でフランス語教育学や言語政策を教えておられる西山教授。選ばれた作品は、フランスで大きな話題を呼んだ映画「レ・ミゼラブル」です。その理由とは?

 

◎今回ご登場いただくのは

西山教行氏(京都大学教授、日本フランス語教育学会 会長)

https://noriyukinishiyama.com/

1. フランスとの関わりを教えて下さい
18歳からフランス語を学びはじめ,東京などでフランス語を教えており,2005年より京都大学でフランス語などを教えています。

2.フランスにまつわるお好きな作品を教えて下さい
映画 「レ・ミゼラブル」(2019)
http://lesmiserables-movie.com

3.作品を選ばれた理由は何ですか?
フランスの現在を鮮明に描いた映画として,「レ・ミゼラブル」(2019)を取り上げたい。この映画はごく最近に見たもので,フランス語教師としてあらためてフランス社会へのまなざしを反省する機会となった。
映画の舞台はパリ郊外のモンフェルメイユで,三人の警官が移民やその二世の居住している地区の人々とどれほどの緊張関係のなかで日常を過ごしているかを活写している。モンフェルメイユとは,ユゴーの小説『レ・ミゼラブル』の登場人物のひとりテナルディエが旅館を経営していた町であり,マリ出身のラジ・リ監督もこの町に暮らしてきた。
郊外を舞台とした映画にはマチュー・カソヴィッツ監督の「憎しみ」(1994)などがあるが,それから20年以上たった現代に製作された作品でも事態はほとんど変化していないことがわかる。警官と郊外の若者との憎悪や暴力は限りなく,人間の尊厳を奪われた人々の怒りがスクリーンからあふれ出る。
この映画はほぼドキュメンタリーに等しい価値を持っているためか,鑑賞後にはやりきれない気持ちが深く残る。それでも,このような悲惨を正面から訴える映画人がおり,映画製作を通じて悲惨な暮らしから這い上がったことを証しすることに,わずかな慰めを見いだすことができるかもしれない。

 

画像:『レ・ミゼラブル』公式サイトより

 

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あのレ・ミゼラブルではなく、こちらのレ・ミゼラブル、なんですね。まさにリアルな「今」のフランスを知ることができるこの作品は、昨年のカンヌ国際映画祭でも「コンペ最大のショック!」との称賛を受けて審査員賞を受賞しています。

西山先生、どうも有難うございました!

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  • 2020-04-11 - 2020-06-30
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