関西の知識人、文化人の方にご登場いただき、フランスの好きな作品をご紹介いただくシリーズ。

第二回は、著書『現代アートとは何か』(河出書房新社)や『百年の愚行』『続・百年の愚行』(Think the Earth)の企画・編集書としても知られる、ジャーナリスト/アートプロデューサーの小崎哲哉さんです。

 

 

今回ご登場いただくのは:小崎哲哉氏

(ジャーナリスト/アートプロデューサー/『Realkyoto』発行人兼編集長)

 

1. フランスとの関わりを教えて下さい
学生のときに留学し、シネマテーク・フランセーズに入り浸る。その後、出版物の企画編集、舞台芸術祭のプロデュース、現代アート展のキュレーション、さまざまなメディアのためのインタビューなどで、フランスの芸術家や表現者と仕事をともにしてきました。

 

2.フランスにまつわるお好きな作品を教えて下さい
ロラン・バルト『表徴の帝国』

 

3.作品を選ばれた理由は何ですか?

いわゆる日本論や日本人論には眉唾のものが少なくない。内容以前に、「日本の独自性」とか「日本人の起源」というような問題の立て方そのものが間違っている。風土も文化も、同じ地球、同じ人間である限りは、相違点よりも共通点のほうがはるかに多い。

とはいえ、それぞれの微細な差異が面白いことは事実である。そして、差異の抽出と分析には、往々にして異文化の目が長けている。ある距離が有効かつ必要なのだと思う。

バルトは本書で「いかにもこの都市は中心をもっている。だが、その中心は空虚である」と、東京における皇居の存在意義(非存在意義? あるいは存在の無意義?)を指摘した。この一文によって本書は、歴史に残る古典となるとともに、日本を訪れるフランスの知的スノッブにとって(谷崎潤一郎の『陰翳礼讃』と並んで)必携の書となった。

同様のことは、クロード・レヴィ=ストロースの『月の裏側——日本文化への視角』や、オギュスタン・ベルクの『風土の日本——自然と文化の通態』などにも言える。フランス人ではないが、ドナルド・キーンの一連の著作も、距離と優れた目が生みだしたものだ。

願わくは日本の知的スノッブが、せめて上に挙げた書籍に目をとおさんことを。そしてフランスの知的スノッブが、バルトと谷崎だけで日本をわかった気にならぬことを。さらに、いつの日か日本の優れた目が、本書に匹敵するようなフランス文化論を著さんことを。

 

===================

小崎さんは、その鋭い視点と思考し続ける姿勢から、いまや関西のアートシーンにおいても不可欠な存在となられました。WEBで発行されているREALKYOTOには、アートの現場をとりまく「今」の課題についても積極的に取り上げておられます。ぜひご一読下さい。http://realkyoto.jp/

小崎さん、どうも有難うございました!

04
16
06
30
  • 2020-04-16 - 2020-06-30
  • 00:00