Klimtオーストリア=フランス=ドイツ=イギリス/2006年/97分/35ミリ/カラー/日本語字幕付

出演:ジャン・マルコヴィッチ、ヴェロニカ・フェレ、サフラン・バロウズ、ニコライ・キンスキー

 

1918年、芸術の都ウィーンの華やぎは、まさに終焉を迎えようとしていた。そして、絵画に新たな潮流を生み出した稀代の画家、クリムトもまた、命の灯火を消そうとしていた。彼を見守るのは愛弟子のエゴン・シーレただ一人。朦朧とした意識の中、クリムトの目には、栄光と挫折の人生がよみがえる。まるで寓話に満ちた彼の絵のように…。彼の絵を語るには忘れてならない言葉がある。それは「エロス」だ。官能と情熱に満ち溢れた世界、あでやかで豊かな色彩、描き続けた「ファム・ファタル(宿命の女)」。彼の描く女性はなまなましいほどの肉感をたたえながら、恍惚の表情を浮かべてさえいる。クリムトに扮するのはその演技に絶大な信頼を寄せられているジョン・マルコヴィッチ。夢と現(うつつ)の狭間に身を置いた分裂症の画家の精神世界までをも、見事に演じきっている。ラウル・ルイスの独特の演出、寓意に満ちたカメラワークはまるでクリムトが描いた絵のように煌めきを放っている。本作では得意の映像詩と「クリムト」という題材を見事に融合させ昇華させている。

 

フィルム提供:日活株式会社

 

「この映画グスタフ・クリムとの伝記が撮られていると見るべきではありません。これは幻想的な作品、あるいはファンタスマゴリア(魔術幻灯)と言ってもいいでしょう。現実、想像上の登場人物たちひとつの視点の周りを回っている一大絵巻(フレスコ)のようなものです。その視点がクリムトという画家であり、彼自身がカメラであると言ってもいいでしょう。したがって、ある意味では、観客は、クリム自身が見ているかのように映像を見ると言えるでしょう。むしろ彼が夢見ているかのようにと言ったほうがいいでしょう。この映画は夢想のようなものですから。溢れるほどの色彩、空間のねじれ、カメラの動きの極端なほどの複雑さ。人間の歴史上、最も豊かで、最も矛盾に満ち、不安を抱えたこの時代を演出するためにどのような手段を用いろうとしているか述べ始めたら長くなってしまうだろう。夢想と言いましたが、『夢想された小説』と述べたほうが正しいかもしれません。『シュニッツラー風の』幻想的作品とでもいいましょうか。」(ラウル・ルイス)

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  • 2012-09-15 - 2012-09-15
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