オンラインプログラム
「社会とアートにおける老女の表象」

 

高齢化社会において、高齢の女性の立場やその表象は、批評家スーザン・ソンタグが1972年に女性の老いの二重の苦しみを指摘したときからそれほど変化していません。女性は常に、いずれやってくる老いに対して不安を抱いていたり意識的であり、社会においては年配の女性が不可視化されています。
加齢による不妊の問題以上に、若いか老いているかという分類が、偏見を促しています。老化の特徴を隠さなければならないという圧力や、現代のさまざまな表現における年配の女性の不可視化によって、女性が年齢を重ねて知識や経験を持つことが脅威とみなされ、彼女たちの存在を見えなくさせることに拍車をかけています。
こういった女性の社会的魅力の「期限切れ」についての問題は、高齢の女性の人口が多数派になりつつある現代において、思考されないものであってはならず、特に高齢の男性との比較において問われるべき問題です。

森美術館では4月22日より9月26日まで、「アナザーエナジー展:挑戦しつづける力世界の女性アーティスト16人」が開催されています。本展はフランス在住2名のアーティストを含む、71歳から105歳までの世界各地の女性アーティスト16名に注目し、彼女たちの初期作品、代表的な傾向を示す作品、そして本展のための新作など多角的に紹介するものです。本展のアプローチの中心にあるのは、今日の女性の可視性、特に女性アーティストの可視性の問題です。

「アナザーエナジー展」ならびにモナ・ショレ著『Sorcières, la puissance invaincue des femmes(魔女)』の日本語版刊行(国書刊行会)の関連企画として、アンスティチュ・フランセ日本では社会やアートにおける「老女の表象」をテーマとする企画を開催します。年配の女性たちに焦点を当てながら、表象、イメージ、記憶、現代社会のなかで、彼女たちがどのような立場にあるのかを考えます。感染症拡大の状況を鑑み、ジャーナリストのモナ・ショレと美術評論家の岡部あおみによる対談、「アナザーエナジー展」出展アーティストのキム・スンギへのインタビュー、さいたまゴールド・シアター女性俳優陣によるリーディングという3つのオンラインプログラムで構成された本企画は、年配の女性たちの「声」を届けることを目指します。

 

配信開始:5月29日(土)予定
予約不要・無料
(本ページにて視聴用リンクをお知らせします)

主催:アンスティチュ・フランセ日本
協力:森美術館、公益財団法人埼玉県芸術文化振興財団

 

 

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モナ・ショレと岡部あおみによる対談
「山姥とおばあちゃん : 社会やアートにおける
老女の表象」
使用言語:フランス語、日本語(逐次通訳付き)

年配の女性についての集団的共有イメージとはどのようなものでしょうか。社会やアートにおける年配の女性の表象はどのような影響を与えているでしょうか。社会学者でジャーナリストのモナ・ショレによる近著『Sorcières, la puissance invaincue des femmes(魔女)』のなかの「老い」をめぐる章(L’ivresse des cîmes)を紹介しながら、ショレと美術評論家の岡部あおみが対談します。

 

モナ・ショレ

フランス語圏スイス出身のジャーナリスト、著述家。ジュネーブで文学の学位を取得した後、リールのジャーナリズム高等学校にてジャーナリズムを学ぶ。ル・モンド・ディプロマティーク誌のジャーナリスト兼編集長。著書に「Beauté fatale, les nouveaux visages d’une aliénation féminine」(2012年)、「Chez soi」(2012年)などがある。Une odyssée de l’espace domestique』(2015年)、『Sorcières, la puissance invaincue des femmes』(2018年)などがある(『Sorcières…(魔女)』は邦訳が国書刊行会より刊行予定)。モナ・ショレは著書のなかで、女性に対する社会的統制の分析や、私たちの想像力をかき立て、年配の女性に対するある種のイメージを与える「魔女」の表象について研究を行っている。

 

岡部あおみ

国際基督教大学、パリ、ソルボンヌ大学修士、ルーブル学院第三課程卒業。5年間メルシャン軽井沢美術館のチーフキュレーター、12年間の武蔵野美術大学芸術文化学科教授、また2年間のパリ高等美術学校の講師と客員教授、1年間のニューヨーク大学客員研究員を経て、2014年より2020年まで国際交流基金・パリ日本文化会館アーティスティック・ディレクター(展示部門トランスフィア)、2018年より上野の杜新構想実行委員会国際部門ディレクター。

 

 

 

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キム・スンギへのインタビュー
司会:岡部あおみ
使用言語:フランス語(日本語字幕付き)

森美術館「アナザーエナジー展」の参加アーティストの一人、フランスを拠点に活動をするキム・スンギへのインタビューを行います。フランスや世界のアート界における女性アーティストの位置づけについて、アーティストの立場からお話をお聞きします。

キム・スンギは、1946年、韓国、扶餘(プヨ)生まれ。ソウル大学校美術大学大学院で絵画を学び、1971年からフランスに移住。映像やパフォーマンス、インスタレーション、音響、彫刻、写真など多様な表現手法の作品で国際的に活躍し、記号論と美学の研究も行っています。仏教や道教などの東洋思想と、ヴィトゲンシュタインの言語論に影響を受けたスンギの作品には、時間、言語、生と芸術への本質的な問いが通底しています。近年は、科学技術にも関心を寄せ、ロボットやAI を用いたインスタレーションを手掛けるなど、幅広い創作活動を行っています。2019年には韓国国立現代美術館(ソウル)で回顧展「キム・スンギ:怠惰な雲」を開催。

協力:森美術館

 

 

 

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さいたまゴールド・シアター女性俳優陣によるリーディング
使用言語:日本語

さいたまゴールド・シアターは、演出家蜷川幸雄が2006年設立した、55歳以上限定の劇団。彩の国さいたま芸術劇場を活動拠点とし、これまで日本の主要な演出家とのコラボレーションにより、国内はもとよりパリ、香港等での海外公演も行っています。同劇団の17人の女性俳優陣が、本企画のテーマに沿ってそれぞれ自由に作品を選び、音声によるリーディングをオンラインで配信します。

本プログラムは、クリエーション活動を続ける年配の女性たちの声を届けることを目的としています。老いの豊かさを味わうすべを知る年配の女性たちの活動をとおして、人生を生きること、人間とは何かを考えます。

 

さいたまゴールド・シアター

「年齢を重ねた人々が、その個人史をベースに、身体表現という方法によって新しい自分に出会うことは可能か」という蜷川幸雄の発案を基に、2006 年 4 月、1,200 名を超える応募者の中からオーディションで選ばれた 48 名で発足。
2007 年 6 月の第 1 回公演『船上のピクニック』(作:岩松了/演出:蜷川幸雄)以降、第一線で活躍する劇作家の書き下ろし作品などを意欲的に上演してきた。パリ(2013 年、2014 年)、香港(2014 年)、ルーマニア(2016 年)に招かれ、海外公演でも成功を収めた。2018 年には番外公演として『ワレワレのモロモロ ゴールド・シアター2018 春』(構成・演出:岩井秀人)を上演。同年、高齢者にフォーカスした国際舞台芸術祭「世界ゴールド祭 2018」に参加し、徘徊演劇『よみちにひはくれない』浦和バージョン(作・演出:菅原直樹)、『BED』(作・演出:デービッド・スレイター)の 2 つの野外パフォーマンスを発表した。
2019 年はさいたまネクスト・シアターとの合同で、マームとジプシーの藤田貴大の書き下ろし作品『蜷の綿-Nina’s Cotton-』リーディング公演を上演。
現在メンバーは 70 歳から 95 歳までの34 名(男性 9 名・女性 25 名)、平均年齢 81.3 歳(2021 年 4 月現在)。
https://www.saf.or.jp/gold_theater/index.html

共催:公益財団法人埼玉県芸術文化振興財団

 

 

メインビジュアル・イラストレーション:
イザベル・ボワノー『Toshiyori, trésors japonais』より
(2022年にL’Association社より刊行予定)

http://i.boinot.free.fr/

 

 

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  • 2021-05-29 - 2021-08-31
  • 03-5206-2500(アンスティチュ・フランセ東京)